20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす
12 ミニカーの発売
十一月一日土曜日。
今日も開店と同時に走り込んでくるお客さんたち。
「走らないでくださーい」
という店員の声が虚しく響く。
今日はプラモの発売日じゃないし、そんなに新作の商品ないはずなのに、なんなの……?
レジからドン引きしてお客さんを見つめていると、隣にいる学生アルバイトスタッフの佐伯君が笑い交じりに言った。
「今日はミニカーの発売日だからすっごいですねー」
「ミニカー……あぁ、そういえばあったっけ。なんか平らのワゴンにみんな出していたよね」
言いながら私は昨日の新作準備を思い出す。
青い台紙の、中身が見えるフックにかけられるブリスターのミニカー商品。海外の商品らしい、ということしか私にはわからなかった。
車の種類が違うのに商品のバーコードの数字が全部一緒だったんだよね。
そういう商品があるんだと驚いた。
「あれ、レアがあるんですよ。ひと箱三十六個入りなんですけど、その中に一個だけ特別なのがあって。台紙や車体にマークがついているのがそのレアってやつで、それを探すのを『トレジャーハント』っていうらしいですよ?」
また知らない単語が飛び出してくる。
「ちょっとまって、どういうこと? おもちゃでしょ? トレジャーハントって宝探しってことだよね? なんで?」
どんどん疑問が出てくるけれど、商品を持ったお客さんがやってきてしまって会話が遮られてしまう。
そのお客さんの多くがプラモかそのミニカーを手にしていた。
お客さんは見事に大人ばかりだ。
おもちゃは子供の物、という先入観がある私には驚きの連続だ。
レジを打ち続けること三十分位だろうか。
今日は、オープンの混雑がひくのが早かった。
私はお客さんが来ないレジの中でひとり呟く。
「あのミニカー、こんなに売れるんだ……」
どのお客さんも十個近くのミニカーを持って来ていて、中には二十個近く持ってきた人もいた。
全員が大人で、私の先入観はもろくも崩れ去っていた。
私の呟きに佐伯君が苦笑交じりに言う。
「すごいですよねー。今日はアソートの発売日だからなおさら」
「アソート?」
アソートはなんか聞き覚えがある。詰め合わせ的なそういう意味だよね。ひと箱セットみたいな。
私の疑問に佐伯君は頷きながら言った。
「そうそう。あのミニカー、全部バーコードの数字一緒ですけどアソートのセットなんですよね。その発売日が第一土曜日って決まってるんですけど、あれ、超人気らしいですよ。お店によっては整理券やるとか」
「ミニカーにそこまでするの?」
そもそもプラモで整理券も驚きだったけど、ミニカーにまでそんな文化があるなんて知らなかった。
奥が深すぎる、おもちゃの世界。
そのあと、まあまあレジは混み、だけど先月の土曜日ほど並ぶことは全然なかった。
それはそれでよかった。
それでも黒物フロアーに比べたらずっとお客さん、多いけれど。
私はレジから売り場を見渡す。
レジの目の前には幼児向けのおもちゃのサンプルが置いてあり、それで小さな子供たちが遊んでいる。
レジの後ろにある、おもちゃになっている人気キャラクターの大きなタペストリーを指差す小さな子もいた。
「あーぱーまん! あーぱーまん!」
まだはっきり喋れないみたいだけれど、その子は私たちの頭の上のタペストリーを指差して必死に訴える。
「そうだねー。お空飛んでるねー」
と、母親が話しかけて、その子を抱き上げて歩き出す。
それでもその子はずっとタペストリーを指差して、あーぱーまん、と繰り返していた。
ここに来てから驚きの連続だ。
私だって小さいとき、こういうおもちゃ売り場に来ていたはずなのに、見たこともない、聞いたことのない事ばかりが起きていく。
あの、丸い顔のパンのキャラクターがこんなにも子供の心を掴んでいるなんて知らなかった。
私もたぶん好きだった。絵本、うちにあったしおもちゃもあったと思う。
でもそんなに意識したことなかったし、今でもアニメが続いていると知って驚いたくらいだ。
そのパンのキャラのおもちゃ、すごい数があるんだもの。
それだけ人気だって事だよね。
そこに、小さな男の子が今日発売のミニカーをぽん、とカウンターに置く。
「あ、いらっしゃいませ」
私はそのミニカーを手に取り、バーコードをスキャンする。
でも大人の姿がなくてどうしよう、と思っていると、保護者と思われる男性がやってくる。そして慌てた様子でスマホの画面を出してきて言った。
「すみません、お願いします」
見せられたのはポイント会員証のバーコードだ。
男の子は親より先にレジに来てしまったらしい。
男性は男の子の頭を抱き寄せるけれど、その子はニコニコ笑ってこちらを見上げて手を出してくる。
私も慌ててお買い上げシールを切って、男性に向かって言った。
「あの、テープで大丈夫ですか?」
「あ、はい、それでお願いします」
その答えを聞いて、私は透明なプラスティック部分にテープを貼り、男の子にそのミニカーを差し出す。
「はい、これどうぞ」
すると男の子はミニカーを手に取って、ペコリ、とお辞儀をした。
可愛い。何この可愛い生き物は。
男性はその子の頭を撫でている。
その様子にほっこりしつつ、私は会計をすすめた。
今日も開店と同時に走り込んでくるお客さんたち。
「走らないでくださーい」
という店員の声が虚しく響く。
今日はプラモの発売日じゃないし、そんなに新作の商品ないはずなのに、なんなの……?
レジからドン引きしてお客さんを見つめていると、隣にいる学生アルバイトスタッフの佐伯君が笑い交じりに言った。
「今日はミニカーの発売日だからすっごいですねー」
「ミニカー……あぁ、そういえばあったっけ。なんか平らのワゴンにみんな出していたよね」
言いながら私は昨日の新作準備を思い出す。
青い台紙の、中身が見えるフックにかけられるブリスターのミニカー商品。海外の商品らしい、ということしか私にはわからなかった。
車の種類が違うのに商品のバーコードの数字が全部一緒だったんだよね。
そういう商品があるんだと驚いた。
「あれ、レアがあるんですよ。ひと箱三十六個入りなんですけど、その中に一個だけ特別なのがあって。台紙や車体にマークがついているのがそのレアってやつで、それを探すのを『トレジャーハント』っていうらしいですよ?」
また知らない単語が飛び出してくる。
「ちょっとまって、どういうこと? おもちゃでしょ? トレジャーハントって宝探しってことだよね? なんで?」
どんどん疑問が出てくるけれど、商品を持ったお客さんがやってきてしまって会話が遮られてしまう。
そのお客さんの多くがプラモかそのミニカーを手にしていた。
お客さんは見事に大人ばかりだ。
おもちゃは子供の物、という先入観がある私には驚きの連続だ。
レジを打ち続けること三十分位だろうか。
今日は、オープンの混雑がひくのが早かった。
私はお客さんが来ないレジの中でひとり呟く。
「あのミニカー、こんなに売れるんだ……」
どのお客さんも十個近くのミニカーを持って来ていて、中には二十個近く持ってきた人もいた。
全員が大人で、私の先入観はもろくも崩れ去っていた。
私の呟きに佐伯君が苦笑交じりに言う。
「すごいですよねー。今日はアソートの発売日だからなおさら」
「アソート?」
アソートはなんか聞き覚えがある。詰め合わせ的なそういう意味だよね。ひと箱セットみたいな。
私の疑問に佐伯君は頷きながら言った。
「そうそう。あのミニカー、全部バーコードの数字一緒ですけどアソートのセットなんですよね。その発売日が第一土曜日って決まってるんですけど、あれ、超人気らしいですよ。お店によっては整理券やるとか」
「ミニカーにそこまでするの?」
そもそもプラモで整理券も驚きだったけど、ミニカーにまでそんな文化があるなんて知らなかった。
奥が深すぎる、おもちゃの世界。
そのあと、まあまあレジは混み、だけど先月の土曜日ほど並ぶことは全然なかった。
それはそれでよかった。
それでも黒物フロアーに比べたらずっとお客さん、多いけれど。
私はレジから売り場を見渡す。
レジの目の前には幼児向けのおもちゃのサンプルが置いてあり、それで小さな子供たちが遊んでいる。
レジの後ろにある、おもちゃになっている人気キャラクターの大きなタペストリーを指差す小さな子もいた。
「あーぱーまん! あーぱーまん!」
まだはっきり喋れないみたいだけれど、その子は私たちの頭の上のタペストリーを指差して必死に訴える。
「そうだねー。お空飛んでるねー」
と、母親が話しかけて、その子を抱き上げて歩き出す。
それでもその子はずっとタペストリーを指差して、あーぱーまん、と繰り返していた。
ここに来てから驚きの連続だ。
私だって小さいとき、こういうおもちゃ売り場に来ていたはずなのに、見たこともない、聞いたことのない事ばかりが起きていく。
あの、丸い顔のパンのキャラクターがこんなにも子供の心を掴んでいるなんて知らなかった。
私もたぶん好きだった。絵本、うちにあったしおもちゃもあったと思う。
でもそんなに意識したことなかったし、今でもアニメが続いていると知って驚いたくらいだ。
そのパンのキャラのおもちゃ、すごい数があるんだもの。
それだけ人気だって事だよね。
そこに、小さな男の子が今日発売のミニカーをぽん、とカウンターに置く。
「あ、いらっしゃいませ」
私はそのミニカーを手に取り、バーコードをスキャンする。
でも大人の姿がなくてどうしよう、と思っていると、保護者と思われる男性がやってくる。そして慌てた様子でスマホの画面を出してきて言った。
「すみません、お願いします」
見せられたのはポイント会員証のバーコードだ。
男の子は親より先にレジに来てしまったらしい。
男性は男の子の頭を抱き寄せるけれど、その子はニコニコ笑ってこちらを見上げて手を出してくる。
私も慌ててお買い上げシールを切って、男性に向かって言った。
「あの、テープで大丈夫ですか?」
「あ、はい、それでお願いします」
その答えを聞いて、私は透明なプラスティック部分にテープを貼り、男の子にそのミニカーを差し出す。
「はい、これどうぞ」
すると男の子はミニカーを手に取って、ペコリ、とお辞儀をした。
可愛い。何この可愛い生き物は。
男性はその子の頭を撫でている。
その様子にほっこりしつつ、私は会計をすすめた。