20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす
13 Vチューバー
午後、お昼を食べたあと、私はガチャガチャコーナーのレジに入る。
そこには何百と言うガチャガチャが置かれていて、他にゲームの筐体もある。
なので子供や大人が入れ替わりたちかわりゲームの筐体の前に座って、お金を入れていた。
ライダーやカプセルモンスターっていう人気のゲームの筐体、それに女の子のアイドルゲームもある。
アイドルプリンセスっていうシリーズらしく、私はすごく心をときめかせた。
アイドル活動のゲームは知っていたけど、アイドルプリンセスっていうシリーズは知らなかった。
そのアイドルゲームは小さな女の子だけではなく、高校生くらいの女の子や大人の女性の姿も多かった。
今そのゲームをプレイしているのは私と同じくらいと思われる女性だ。
流れる音楽に合わせてボタンを押すらしい。
シャンシャン、というボタンを押す音が聞こえてくる。
そこにけたたましい、ビービーという音と共に近づいてくる鬼頭さんの姿が見えた。
彼は、レジの前に立つと私にその音の原因を差し出しながら言った。
「売場で鳴ってた」
それは、一万円くらいはしそうなフィギュアだった。鳴っていたのは窃盗防止の、黒くて四角い防犯のタグだ。
商品から外れたり、出入り口のゲートに近づくと鳴る仕様になっている。
私は鬼頭さんからそれを受け取り、タグをはずして専用の器具で音を止める。
「ありがとう、それ付け直しておいてくれる?」
「わかりました。あ、鬼頭さん、ちょっと聞きたいことあるんですけど」
言いながら、私はタグを巻きつけるためのラップを、レジの後ろの棚から取り出す。
「なに?」
レジカウンターの向こう側。
鬼頭さんは小さく首を傾げてこちらを見ている。
私はタグを商品に巻きつけながら、以前に聞いたVチューバーの事を尋ねた。
「あの、前に言っていたじゃないですか。プラモデルの配信しているVチューバーがいるって」
「あぁ、セナのこと?」
その名前を聞くと、変な緊張が走る。だって赤月君と同じ名前なんだから。
私はその緊張を誤魔化すように手を動かしつつ答えた。
「そうです、そうです。あのあと動画見たんですけど、本当にプラモを作る様子とか配信してるんですね。びっくりしました」
この間赤月君と出掛けた日に見た、セナ=ジェイドの動画。
おはよう配信がたくさんあって、プラモを作っている様子とか、塗装している動画とかもあった。
ゲームも好きみたいでたまにゲームプレイ動画の配信もしているらしい。
特におはよう配信には力を入れているみたいで、毎日九時から一時間ほどやってるようだ。
――赤月君との共通点、多すぎないかな。それに声がすごく似てる。マイクを通してるし、声を作ってるようにも聞こえるから微妙だけど。
私の言葉を受けて、鬼頭さんは嬉しそうに笑う。
「そうそう、けっこう有名なんだよ。模型雑誌にも寄稿してるらしいよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。『ホビーガーデン』っていう雑誌なんだけど」
そう鬼頭さんが教えてくれる。
すごい。けど…
私の中で疑惑が徐々に確信にかわりつつある。
セナ=ジェイドは登録者二十万人。赤月君も二十万人と言っていた。
それにプラモデルと毎日のおはよう配信。雑誌への寄稿。そこまで共通する人間、そうはいないだろう。
でも、この間はぐらかされたことを思うと、聞いたところで教えてくれそうにないように思う。
気になるけど……そこまで踏み込んでいいのかと思うと足踏みしてしまう。
そもそもVチューバーが、これ、自分です、なんて周りに言うだろうか。
顔出しをしているわけではないし、言わなければ絶対にわからない。
だからわざわざ名乗ることもしないと思う。
十一月十日月曜日に、私は赤月君と会う約束を取り付けていた。
もう少し私と赤月君の距離が縮んだら、何か教えてくれるかな。
私は鬼頭さんに小さく頭を下げて、防犯のタグを巻きなおした商品を差し出す。
「セナってすごいんですね」
「うん、グッズも出してるし、ボイスも販売してるんだよ。さすがに俺はそこまでは興味ないけど。動画が好きなだけだし」
グッズ。ボイス販売。まるでアイドルだ。Vチューバーってそんなことまでしてるんだ。
後でもう少し調べてみようかな。
そうひとり決意を固めて、私は鬼頭さんの背中を見送った。
そこには何百と言うガチャガチャが置かれていて、他にゲームの筐体もある。
なので子供や大人が入れ替わりたちかわりゲームの筐体の前に座って、お金を入れていた。
ライダーやカプセルモンスターっていう人気のゲームの筐体、それに女の子のアイドルゲームもある。
アイドルプリンセスっていうシリーズらしく、私はすごく心をときめかせた。
アイドル活動のゲームは知っていたけど、アイドルプリンセスっていうシリーズは知らなかった。
そのアイドルゲームは小さな女の子だけではなく、高校生くらいの女の子や大人の女性の姿も多かった。
今そのゲームをプレイしているのは私と同じくらいと思われる女性だ。
流れる音楽に合わせてボタンを押すらしい。
シャンシャン、というボタンを押す音が聞こえてくる。
そこにけたたましい、ビービーという音と共に近づいてくる鬼頭さんの姿が見えた。
彼は、レジの前に立つと私にその音の原因を差し出しながら言った。
「売場で鳴ってた」
それは、一万円くらいはしそうなフィギュアだった。鳴っていたのは窃盗防止の、黒くて四角い防犯のタグだ。
商品から外れたり、出入り口のゲートに近づくと鳴る仕様になっている。
私は鬼頭さんからそれを受け取り、タグをはずして専用の器具で音を止める。
「ありがとう、それ付け直しておいてくれる?」
「わかりました。あ、鬼頭さん、ちょっと聞きたいことあるんですけど」
言いながら、私はタグを巻きつけるためのラップを、レジの後ろの棚から取り出す。
「なに?」
レジカウンターの向こう側。
鬼頭さんは小さく首を傾げてこちらを見ている。
私はタグを商品に巻きつけながら、以前に聞いたVチューバーの事を尋ねた。
「あの、前に言っていたじゃないですか。プラモデルの配信しているVチューバーがいるって」
「あぁ、セナのこと?」
その名前を聞くと、変な緊張が走る。だって赤月君と同じ名前なんだから。
私はその緊張を誤魔化すように手を動かしつつ答えた。
「そうです、そうです。あのあと動画見たんですけど、本当にプラモを作る様子とか配信してるんですね。びっくりしました」
この間赤月君と出掛けた日に見た、セナ=ジェイドの動画。
おはよう配信がたくさんあって、プラモを作っている様子とか、塗装している動画とかもあった。
ゲームも好きみたいでたまにゲームプレイ動画の配信もしているらしい。
特におはよう配信には力を入れているみたいで、毎日九時から一時間ほどやってるようだ。
――赤月君との共通点、多すぎないかな。それに声がすごく似てる。マイクを通してるし、声を作ってるようにも聞こえるから微妙だけど。
私の言葉を受けて、鬼頭さんは嬉しそうに笑う。
「そうそう、けっこう有名なんだよ。模型雑誌にも寄稿してるらしいよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。『ホビーガーデン』っていう雑誌なんだけど」
そう鬼頭さんが教えてくれる。
すごい。けど…
私の中で疑惑が徐々に確信にかわりつつある。
セナ=ジェイドは登録者二十万人。赤月君も二十万人と言っていた。
それにプラモデルと毎日のおはよう配信。雑誌への寄稿。そこまで共通する人間、そうはいないだろう。
でも、この間はぐらかされたことを思うと、聞いたところで教えてくれそうにないように思う。
気になるけど……そこまで踏み込んでいいのかと思うと足踏みしてしまう。
そもそもVチューバーが、これ、自分です、なんて周りに言うだろうか。
顔出しをしているわけではないし、言わなければ絶対にわからない。
だからわざわざ名乗ることもしないと思う。
十一月十日月曜日に、私は赤月君と会う約束を取り付けていた。
もう少し私と赤月君の距離が縮んだら、何か教えてくれるかな。
私は鬼頭さんに小さく頭を下げて、防犯のタグを巻きなおした商品を差し出す。
「セナってすごいんですね」
「うん、グッズも出してるし、ボイスも販売してるんだよ。さすがに俺はそこまでは興味ないけど。動画が好きなだけだし」
グッズ。ボイス販売。まるでアイドルだ。Vチューバーってそんなことまでしてるんだ。
後でもう少し調べてみようかな。
そうひとり決意を固めて、私は鬼頭さんの背中を見送った。