秀麗畏怖極道は甘すぎる

11話 合コン

「凛音さん、私この後予定があるので。お先に失礼します。」

スマホで時間を確認する。

予定。どこに。誰と。何の。
質問が喉元まで込み上げたが、凛音は全部飲み込んだ。

「はいよ、お疲れ。」

あっさり送り出した。内心では全くあっさりしていないのだが。
小走りで去っていくさくの背中を廊下の角に消える最後まで目で追い続ける。

「……予定、なぁ。」

そして若い衆を呼び出す。

「おい、さくの跡つけとけ。」

さくは合コンに参加していた。
来たくて来たわけじゃない。ただの人数合わせだ。

「さくちゃん、可愛いね。」と男が言う。

「はぁ…、ありがとうございます。」

駅前の居酒屋、個室。
男女4対4の合コンは盛り上がりを見せていた。――少なくとも表面上は。
さく以外の女子はそれぞれ隣の男と楽しそうに話し込み、人数合わせのさくはほとんど放ったらかしにされている。
向かいに座った男がやたらとさくに話しかけてくるのが唯一の救いと言えば救いだったが…。

「さくちゃんってさ、普段何してる人なの?仕事忙しい?」

茶髪、中肉中背、爽やかな笑顔。どこにでもいる普通の男。年齢はさくと同じくらいか少し上。
悪意はない。ないからこそ厄介だった。
ジョッキを片手に身を乗り出してくる距離感がじわじわと近い。

「普通に会社員してます。」

まさかヤクザの構成員だとは口が滑っても言えるわけがない。

「へぇ、真面目なんだね。」

男はへらっと笑いながら枝豆を口に放り込んだ。
「会社員」という嘘を疑う様子は微塵もない。
隣にいた別の男も会話に入ってきて、場の空気がさらに賑やかになる。

「さくちゃんだっけ?彼氏いるの?」

直球。空気が一瞬だけ変わる。テーブルの女子達がちらりとさくを見て、にやにやと笑った。「それ聞いちゃう?」という顔だ。

「いません。」

「マジ?意外だなぁ。めっちゃ可愛いのに。」
「ね!俺も思った。」

二人が顔を見合わせて頷き合う。わざとらしいほど息が合っている。
「出会いがないの?」「趣味は?」「休みの日は何してんの?」質問の嵐がさくを襲った。

その時だった。
個室の引き戸がガラリと開いた。

店員ではない。明らかに客でもない空気を纏った長身の男。

白銀の髪、切れ長の淡いブルーの目、凛と整った顔、あまりにも目立つ男が立っていた。
ラフな服装だが隠しきれない威圧感…。

場が凍った。

< 11 / 11 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop