いつか何処かで -君と目があったとき-

さよなら、初恋

 「♬この大空に 翼をひろげ」
 なぜだかうちの中学校ではこの曲を卒業式で大合唱する。
  [フォークソングのB面って、知っている人いるのか]
 そう思いながら歌う俺。同級生は、俺は中身は60代だと言う。1970年代の曲を好き好んで聞く中学生も少なからずいるはずなのに、冷たくあしらわれる。

 滞りなく終わった卒業式。俺には、卒業式の思い出よりも、最後のホームルームで担任が号泣したことの方が記憶に残っている。そしてもう一つ。
 生徒玄関の外で、アノ子と目があったこと。

 中学入学してすぐに、話しかけてくれたアノ子・莉音(りおん)。莉音がいたから、3年間平穏に過ごせたと言っても良いほどの恩人だ。そして、初めての好きになった人だった。

 ”ありがとう”って伝えたくて、あなたを見つめるけど、結局、何も伝えることができずに中学校を後にした。


 家に戻れば、思い出にひたらずに明日へ向けて受験勉強をする。俺が受験をする高校は、毎年定員割れすることだけが有名となる高校のため、よっぽどのことが無ければ合格する。ただ、心配だから最後の詰めの勉強だ。
 勉強のお供はいつもラジオを垂れ流す。聞き流せるため、音楽よりも勉強に集中できる。勉強をやめ、ラジオを止めようと思ったその時、
 「それでは、ラジオネーム・リンさんのリクエストにお応えして、ヤングスキニーで『さよなら、初恋』です。」
 [そういえば、莉音はヤングスキニーが好きだったよなぁ]
 そう思いながら、楽曲を聴いた。
 「ヤングスキニーで『さよなら、初恋』でした。この曲をリクエストしたリンさん。今日、卒業式だったそうで、卒業おめでとうございます!《好きだった人に告白しようと思っていましたが、できませんでした。》あー。春なのにお別れですか。そんな気持ち私もあったり、なかったり......。これからが青春ですよ。」
  [同じ思いの人もいるもんだなぁ]
 そう思いながら、俺の初恋は、静かに去っていった。


〈登場楽曲〉
ヤングスキニー『さよなら、初恋(2024年)』(詞・曲:かやゆー)
赤い鳥『翼をください(1971年)』(詞:山上路夫、作曲・編曲:村井邦彦)
いきものがかり『ありがとう(2010年)』(詞・曲:水野良樹、編曲:本間昭光)
柏原芳恵『春なのに(1983年)』(詞・曲:中島みゆき)
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