トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
復帰した次の日から。

私は本格的に、育成支援プロジェクトへ戻ることになった。

朝から講義。

症例検討。

シミュレーション訓練。

久しぶりのスケジュールは、思っていた以上に濃い。

でも。

嫌じゃなかった。

むしろ。

“帰ってきた”って感覚が、少しずつ身体へ馴染んでいく。

講義室の扉を開ける。

その瞬間。

「あ……!」

室内にいたスタッフたちの視線が、一斉にこちらへ向いた。

一瞬、空気が止まる。

そして。

「一ノ瀬さん!!」

「おかえりなさい!!」

一気に空気が明るくなった。

私は少し照れくさくなりながら、小さく笑う。

「……久しぶりです」

育成支援プロジェクトのメンバーたち。

事故前、一緒に指導側として動いていた神波さんと斉賀さんも、すぐこちらへ来てくれた。

神波さんなんて、今にも泣きそうな顔だ。

「ほんとによかった…!」

「すごく心配しました」

すると横で、斉賀さんも静かに笑った。

「でも、本当に安心しました」

その声が優しくて。

胸がじんわり熱くなる。

私は改めて二人を見る。

事故前より、少し空気が変わっていた。

表情にも。

立ち振る舞いにも。

“指導する側”としての余裕が出ている。

きっと私が止まっていた時間も。

二人はずっと現場で踏ん張ってきたんだ。

「……なんか、二人とも変わりましたね」

私がそう言うと。

神波さんが目を丸くした。

「え、そうですか?」

「うん」

「なんか、さらに頼もしくなりました」

その瞬間。

神波さんが照れたみたいに頭をかく。

「いやぁ……」

「森崎主任にめちゃくちゃ鍛えられたんで」

後ろから。

「聞こえてまっせー?」

森崎さんの声。

振り返ると、資料を抱えた森崎さんが呆れた顔して立っていた。

講義室に笑いが起きる。

斉賀さんも苦笑しながら頷く。

「でも実際、かなり現場任されるようになりました」

その言葉に。

私は少し驚く。

2人はちゃんと、このプロジェクトを支える指導者の顔になっていた。

嬉しかった。

少し悔しいくらいに。

でも、それ以上に嬉しかった。

すると。

神波さんが、ふっと真面目な顔になる。

「でも、一ノ瀬さんいない間」

「みんなずっと待ってました」

その声に、室内が少し静かになる。

斉賀さんも小さく頷いた。

「現場で“一ノ瀬さんならどうするか”って話、何回も出ました」

胸の奥が、じわっと熱くなった。

私は少し笑う。

「……ハードル上げないでください」

すると。

森崎さんが後ろでふっと笑った。

「いや、実際みんな待ってたからなぁ」

「特に真壁なんか毎回“一ノ瀬さん戻ってきたら見てもらお”言うてたし」

「ちょ、主任!!」

真壁くんが慌てる。

講義室にまた笑いが広がった。

その笑い声を聞きながら。

私は静かに思った。

——戻ってこれてよかった。

本当に。

ここへ帰ってこられて、よかったって。
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