トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
家へ帰ってきた頃には、外はすっかり夕方になっていた。

久しぶりの東京。

久しぶりのデート。

そして、久しぶりに陽貴くんと過ごす“普通の時間”。

全部が幸せすぎて。

リビングへ入るなり私はソファへぽすんと身体を預けた。

「……つかれたぁ」

そう呟くと。

後ろから陽貴くんが笑う。

「そんなに?」

「半年ぶりの東京は体力使うんです」

「なにそれ」

クスクス笑いながら、陽貴くんも隣へ座る。

そして自然みたいに、私を自分の腕の中へ引き寄せた。

「……ん」

私は抵抗することなく、その胸へ身体を預ける。

落ち着く。

ほんとに。

驚くくらい。

陽貴くんの心臓の音を聞いてるだけで、安心する。

すると陽貴くんが、髪へそっとキスを落とした。

「今日ずっとくっついてるね」

「だって半年ぶりだもん」

私がそう言うと。

陽貴くんが、少し嬉しそうに笑う。

「紗凪からそんなこと言うの珍しい」

「……だめ?」

「だめなわけない」

むしろ嬉しそう。

私は少し笑いながら、陽貴くんの服を軽く掴む。

すると陽貴くんがふと、私の胸元へ視線を落とした。

そしてゆっくり手を伸ばす。

指先が、ネックレスへ触れた。

小さく揺れるシルバー。

陽貴くんが大阪に行く前にプレゼントしてくれたもの。

事故の日も。

大阪にいた半年も。

ずっと身につけていた。

陽貴くんが、少し目を細める。

「……つけてくれてたんだね」

静かな声。

私はそのネックレスへ自分でも触れながら、小さく笑った。

「当たり前」

「わたしのお守りなんだから」

その瞬間。

陽貴くんの表情が、少し崩れる。

まるで泣きそうになるのを我慢してるみたいに。

私は目を瞬く。

「……陽貴くん?」

すると陽貴くんが、そっと私を抱きしめ直した。

ぎゅっと離したくないみたいに。

私はそっと、陽貴くんの背中へ腕を回した。

「……ずっと一緒だったよ」

「大阪でも」

「現場行く時も」

「怖かった時も」

「これ触ると、陽貴くんいる気がしてた」

そう言うと。

陽貴くんが、ほんの少し肩を震わせた。

それから。

困ったみたいに笑う。

「……そんなこと言われたら」

「また離せなくなる」

「もう離さなくていいよ」

自然と、そんな言葉が零れた。

陽貴くんが、ぴたりと動きを止める。

私は少し照れながら笑った。

「……帰ってきたんだから」

その瞬間。

陽貴くんが、たまらなそうに私の頬へキスをした。

一回。

二回。

何度も。

「好き」

耳元で落ちる声。

私は少し顔を赤くしながら、陽貴くんの肩へ額を預ける。

静かな部屋。

テレビもつけてない。

聞こえるのは、お互いの呼吸だけ。

でもその静けさが心地よかった。

陽貴くんが、私の髪をゆっくり撫でる。

「……紗凪」

「ん?」

「これからは、ちゃんとそばいる」

私は小さく笑う。

「お仕事は?」

「もちろんする」

「でも前より帰る」

「休む」

「紗凪優先する」

「そんな簡単に言っていいの?」

そう聞くと。

陽貴くんが、真っ直ぐ私を見た。

「簡単じゃないから言ってる」

その目に。

嘘が一つもなくて。

私は胸がいっぱいになる。

だから。

今度は私から、そっとキスをした。

陽貴くんが、少し驚いた顔をする。

私は照れ隠しみたいに笑った。

「……わたしも、ちゃんと甘えるようにする」

その瞬間。

陽貴くんが、幸せそうに目を細めた。

「うん」

その返事が、あまりにも優しくて。

私はまた、この人のことを好きだと思った。
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