トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
その夜。

久しぶりに、陽貴くんと一緒にお風呂へ入った。

浴室には柔らかい湯気が広がっていて。

隣に陽貴くんがいるだけなのに、なんだか妙に落ち着かない。

「……そんな見ないで」

照れ隠しみたいに言うと。

陽貴くんは、真顔のまま返した。

「なんで?最高の身体なのに」

私は思わず吹き出してしまう。

湯船に並んで浸かる。

肩が触れるたび、胸が少しくすぐったい。

陽貴くんは静かに私を見つめながら、小さく呟いた。

「……細くなった」

その声が優しくて。

少しだけ苦しくなる。

「ちゃんと食べて戻すね」

「無理しなくていい」

「でも体力落ちたの悔しい」

そう言うと。

陽貴くんが、困ったみたいに笑った。

「ほんと仕事人間」

私は肩までお湯へ沈みながら、小さく息を吐く。

「でもね」

「ん?」

「東京戻ってきてから、すごい安心してる」

陽貴くんが静かにこちらを見る。

私はぽつりぽつりと続けた。

「大阪でも平気なつもりだったけど」

「ずっと頑張らなきゃって思ってたから」

「ちゃんと力抜けるの、久しぶりかも」

すると陽貴くんがそっと私の濡れた髪を耳へかけた。

「……おかえり、紗凪」

低くて、柔らかい声。

私は胸の奥がじんわり熱くなる。

「ただいま」

その言葉に。

陽貴くんが、安心したみたいに笑った。

お風呂を出たあと。

一緒に髪を乾かして。

並んでベッドへ入る。

それだけのことが、こんなに幸せなんだって思う。

ベッドへ入った瞬間。

陽貴くんが私を抱き寄せた。

ぴったり重なる体温。

私はその胸へ頬を寄せながら、小さく笑う。

「……ほんと離れないね」

「離れたくない」

迷いのない声。

私は少し照れながら、陽貴くんの服を握った。

部屋は暗くて。

静かで。

聞こえるのは、お互いの呼吸だけ。

陽貴くんの手が、ゆっくり背中を撫でる。

その優しさが心地よくて。

張っていた気持ちが、少しずつ溶けていく。

すると。

頭の上から、静かな声が落ちた。

「……紗凪」

「ん……?」

「はぁ…ほんと…大切すぎる」

胸がぎゅっとなる。

私は眠たくなりながら、そっと陽貴くんへ抱きついた。

「私もだよ」

そう言うと。

陽貴くんの腕が、さらに優しく私を包み込む。

「ずっと待ってた」

掠れる声。

その声が愛おしくて。

私は安心したまま、ゆっくり目を閉じた。

もう、大丈夫。

そう思えた。

離れていた時間も。

寂しかった夜も。

全部、この腕の中で溶けていくみたいだった。

私は陽貴くんの温もりを感じながら、静かに眠りへ落ちていった。
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