トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
陽貴くんが出かけたあと。

私はしばらくベッドの上で、ぼーっと天井を見ていた。

……筋肉痛、すごい。

動くたびに身体が軋む。

「ほんと、ひどい……」

小さく呟きながら、私はようやく布団から出た。

カーテンを開ける。

差し込む朝の光。

東京の景色。

大阪で過ごした半年が夢みたいに感じる。

でも胸の奥には、ちゃんと残っていた。

出会った人たち。

現場。

ヘリの音。

泣いたことも。

笑ったことも。

全部。

私はゆっくり身支度を始める。

今日は、久しぶりに東京中央大学病院へ行く日だった。

大阪で買ったお土産を、両手いっぱいに持つ。

「……重」

思わず笑ってしまう。

でもこの重さすら、なんだか嬉しかった。

玄関を出る。

久しぶりの東京の空気。

見慣れた街並み。

駅へ向かう道。

全部が懐かしい。

電車へ揺られながら、私はぼんやり窓の外を見ていた。

半年。

長かったようで、あっという間だった。

気づけば、自然と笑みが零れる。

——みんな元気かな。

そんなことを考えているうちに。

病院へ到着した。

見慣れたエントランス。

忙しそうに行き交うスタッフ。

消毒液の匂い。

一気に“戻ってきた”実感が湧いてくる。

私は少し緊張しながら、エレベーターへ乗った。

久しぶりのICU。

扉が開く。

ナースステーションの声が聞こえる。

私はゆっくり中へ入った。

その瞬間。

「……え」

空気が止まった。

カルテを見ていた後輩。

点滴確認をしていた看護師。

先生。

みんなが、一斉にこちらを見る。

数秒の沈黙。

それから。

「えぇぇぇぇ!?」

ICUに大声が響いた。

私は思わず肩を揺らす。

「い、一ノ瀬さん!?!?」

「え、うそ!?!?」

「帰ってきてたんですか!?」

「ちょ、なんで言ってくれないんですか!!」

一気に人が集まってくる。

私は思わず笑ってしまった。

「久しぶり」

そう言った瞬間。

後輩のひとりが、半泣きみたいな顔になる。

「うわぁぁぁほんとに一ノ瀬さんだぁ……!」

「なにその反応〜」

「だってめちゃくちゃ会いたかったです!」

その声に、胸がじんわり熱くなる。

すると。

奥のスタッフルームから、聞き慣れた声。

「……騒がしい思ったら」

振り返る。

そこには。

ICU時代の師長が立っていた。

私を見た瞬間。

目を丸くする。

「一ノ瀬」

私は小さく頭を下げた。

「ご無沙汰してます、師長さん」

すると師長がふっと笑う。

そして。

「おかえりなさい」

優しい声。

その一言に。

胸がいっぱいになる。

私は思わず、少しだけ目を潤ませた。

「ただいまです」

すると。

周りから一気に歓声が上がる。

「やばい泣きそう!」

「ほんと戻ってきたんだ……!」

「大阪どうでした!?!?」

「フライトナース育成プロジェクトって実際どんな感じなんですか!?」

「一ノ瀬さんテレビで見ましたよ!」

質問攻め。

相変わらずの賑やかさ。

でもそれがすごく嬉しかった。

私はお土産の袋を掲げる。

「とりあえず落ち着いて」

「大阪土産あるから」

その瞬間。

「きゃーーーー!!!」

「一ノ瀬さん神!!!」

「大阪限定!?!?」

一気に群がってくる。

私は思わず吹き出した。

……あぁ。

帰ってきたんだ。

本当に。

ここへ。
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