トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
「紗凪」

優しく髪を撫でながら、陽貴くんが低い声で名前を呼ぶ。

「ん……?」

顔を上げると。

陽貴くんが少しだけ真面目な顔をしていた。

「大阪行くまでの1ヶ月さ」

「……うん」

「ここで一緒に住まない?」

一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

「え……?」

すると陽貴くんが少し困ったみたいに笑う。

「同棲ってほど大げさじゃなくていいから」

「でも、少しでも一緒にいたい」

その声があまりにも優しくて、胸がぎゅっとなる。

「どうせ今も結構泊まり来てるし」

「だったらちゃんと毎日“おかえり”言いたいなって」

その言葉に、心臓がじわっと熱くなる。

毎日、一緒。

朝起きて。

仕事行って。

帰ってきて。

「おかえり」って言い合う。

そんな未来を想像した瞬間。

胸がふわっと温かくなった。

でも同時に、少し照れくさい。

「……迷惑じゃない?」

思わずそう聞くと。

陽貴くんが一瞬きょとんとしたあと、苦笑した。

「なんでそうなるの」

そしてそのまま、額を軽く小突かれる。

「むしろ俺がお願いしてる側なんだけど」

「っ……」

「紗凪が家にいるだけで帰るの楽しみになるし」

「今以上に仕事頑張れる気しかしない」

さらっとそんなことを言う。

ずるい。

本当にずるい。

私は少し視線を落として、小さく笑った。

「……じゃあ、お世話になります」

そう言った瞬間。

陽貴くんの目がぱっと柔らかくなる。

「ほんと?」

「うん」

次の瞬間。

ぎゅうっ。

思い切り抱きしめられた。

「っ、苦し……」

「無理、嬉しい」

完全に甘えモードだ。

でも。

その声が本当に嬉しそうで。

私まで自然と笑ってしまう。

「紗凪との1ヶ月、絶対楽しい」

「……まだ始まってないよ?」

「もう楽しい」

即答だった。

そのまま陽貴くんが私の肩へ顔を埋める。

「毎日一緒に寝れて」

「毎日おかえり言えて」

「毎日紗凪補給できるとか最高すぎる」

「補給って」

思わず笑うと、陽貴くんが満足そうに目を細めた。

そしてふっと優しい顔で私を見る。

「いっぱい楽しい思い出作ろうね」

その言葉に。

胸がじんわり熱くなる。

離れる未来は寂しい。

でもその前の1ヶ月を、二人で大事に過ごしたい。

私はそっと陽貴くんへ寄り添った。

するとすぐに、包み込むみたいに抱き寄せられる。

温かい。

安心する。

「……陽貴くん」

「ん?」

「大好き」

小さくそう言うと。

陽貴くんがぴたりと止まった。

そして次の瞬間。

「……今日ほんと俺のこと殺しにきてる?」

真顔でそんなことを言うから、私は思わず吹き出してしまった。
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