トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
ご飯を食べ終わって。

片付けも終わらせて。

私たちは並んでソファへ座っていた。

陽貴くんは私の隣で、ぴったり肩を寄せてくる。

というより。

ほぼ抱きついてる。

「重い……」

「紗凪不足だから仕方ない」

即答だった。

私は思わず苦笑する。

でもこうしてくっついている時間が嫌じゃなくて、結局そのままにしてしまう。

陽貴くんが私の肩へ頭を預けたまま、小さく息を吐いた。

「……落ち着く」

「疲れてる?」

「んー、まぁ」

そう言いながら、私の指へ自分の指を絡めてくる。

長くて綺麗な指。

その手が好きだな、なんて思ってしまう。

静かな時間。

温かい体温。

このままずっとこうしていたい。

私は小さく息を吸った。

「……陽貴くん」

「ん?」

「正式に決まったの」

その瞬間。

陽貴くんが少しだけ顔を上げる。

私は視線を落としながら続けた。

「4月から大阪中央医療センターに半年間行くことが」

静かな空気が流れる。

陽貴くんは何も言わず、ちゃんと聞いてくれていた。

「今日、大阪中央医療センターの先生と看護主任が病院来てくれて、オリエンテーション受けてきた」

「思ってたより……本当に大きいプロジェクトだった」

話しながら、自分でも実感していく。

もう決まったんだ。

本当に大阪へ行く。

「若手フライトナース教育を任されるみたいで」

「実際にヘリ乗って、現場で指導するって」

そこまで言うと。

陽貴くんが静かに笑った。

「やっぱり紗凪、すごい」

真っ直ぐ返ってくる声。

「人の命背負って」

「しかも教える側に立つんでしょ?」

「簡単にできることじゃない」

その言葉に、胸がじんわり熱くなる。

陽貴くんは少しだけ視線を落として、ふっと笑った。

「寂しいけどね」

「……うん」

「めちゃくちゃ寂しい」

正直な声だった。

その一言だけで、胸が締めつけられる。

すると陽貴くんが、そっと私を抱き寄せる。

大事に包み込むみたいに。

「でも」

低く優しい声。

「前も言ったけど俺、紗凪が頑張ってる姿ほんと好きだから」

「可愛い紗凪も好きだけど」

「現場で必死に命繋いでる紗凪も、すごく好き」

その言葉が、胸の奥へ真っ直ぐ届く。

私は思わず陽貴くんの服をぎゅっと掴んだ。

すると陽貴くんが少し目を細める。

「……なにその顔」

「好きだなって思って」

ぽろっと本音が零れる。

その瞬間。

陽貴くんがぴたりと止まった。

次の瞬間。

ぐいっと引き寄せられる。

「っ……!」

気づけば完全に陽貴くんの腕の中。

近すぎる距離。

甘く細められた目。

「ほんと、可愛すぎる」

耳元で落ちる低い声に、心臓が跳ねる。

私は顔を隠すみたいに陽貴くんの胸へ額を押しつけた。

すると陽貴くんがくすっと笑う。

「照れてる」

「……うるさい」

「その反応も好き」

ずるい。

本当にずるい。

でも。

こうして抱きしめられていると、不安が少しずつ溶けていく気がした。

陽貴くんの腕の中は、やっぱり一番安心する。

「紗凪」

「ん……?」

「半年なんて、すぐだから」

優しく髪を撫でられる。

「ちゃんと待ってる」

その言葉が嬉しくて。

私は小さく「うん」と頷いた。
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