トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
「紗凪〜……」

朝6時。

まだ眠い頭でお弁当を作っていると、後ろから陽貴くんが抱きついてくる。

「……重い」

「充電中」

完全に寝起きの声。

髪も少し跳ねてる。

外では“完璧王子様”なんて言われてる人が、家ではこんなに甘えん坊なの、未だにギャップがすごい。

「陽貴くん今日朝から撮影でしょ」

「うん……」

「じゃあ起きないと」

「紗凪も仕事」

「私はもう起きてるの」

そう言うと、陽貴くんが私の肩へ顔を埋めた。

「……行きたくない」

「子どもみたい」

思わず笑ってしまう。

すると陽貴くんが顔を上げて、じーっと私を見る。

「だって最近一緒にいれる時間少ない」

「帰ってきても紗凪寝落ちしてる日あるし」

「……ごめん」

「責めてない」

そう言いながら、ぽんっと頭を撫でられる。

「頑張ってるの知ってるから」

その一言が優しくて、胸がじんわり温かくなる。

私はお味噌汁をよそいながら、小さく笑った。

「はい、ご飯できたよ」

「はーい」

陽貴くんは素直に椅子へ座る。

その姿がなんだか可愛くて、また笑ってしまった。

「なに」

「別に〜」

「絶対なんか思ったでしょ」

そんなくだらないやり取りさえ、楽しかった。

朝ご飯を食べて。

一緒に家を出る。

玄関でネクタイを整えてあげると、陽貴くんが嬉しそうに目を細めた。

「……新婚みたい」

「っ……」

「茹でダコ紗凪ちゃんだ」

「朝から変なこと言うから!」

慌てる私を見て、陽貴くんが楽しそうに笑う。

そしてそのまま、軽く額へキスを落とした。

「いってきます」

「……いってらっしゃい」

ドアが閉まったあと。

私は熱くなった顔を押さえながら、その場にしゃがみ込む。

——心臓がもたない。
< 43 / 242 >

この作品をシェア

pagetop