声、好きです。……って告白じゃなかったのに!?

第1話:私のフェチ


「まな!今日も来てくれてありがとー。ゆっくりしていってな!」


画面越しに響くその声に、私の心は一瞬で解けていく。
癒やしを求めて彷徨っていた配信アプリで、ようやく巡り合えた「理想」の声。

おじさんのような低すぎる声は落ち着かないし、高すぎる声は耳について安心できない。

あれも違う、これも違う。まるでマッチングアプリで条件を絞り込むように、自分勝手な「なし」を増やしていく日々の中で、私は彼を見つけた。


ずっと聴いていたいと思うのに、高すぎず低すぎず、柔らかい布団に包まれているような彼の声は、あまりに心地よくて。

気づけばいつも、眠りの淵へと誘われてしまう。
だから、配信中のコメントも満足にできなくて。

せめて少しでも、この感謝の気持ちを届けたい。その一心で、私は勇気を振り絞ってSNSのメッセージボタンをタップした。


【いつも綾人くんの配信、見てます】
【声、好きです】
【これからも応援してます】


たった三行のメッセージ。
それを送るのに、心臓が口から飛び出しそうなほど緊張する日が来るなんて、想像もしていなかった。

送信ボタンを押した後、指先が微かに震える。
すると、間を置かずに「既読」の二文字が画面に浮かぶ。


「……っ!」


心構えすらできていなかった私は、驚きのあまり、持っていたスマートフォンをベッドの上に放り投げてしまう。

白いシーツに沈んだスマホを見つめたまま、ただ、激しく打ち鳴らされる自分の鼓動を聴いていることしかできなかった。


震える指先で手放したはずのスマートフォンが、追い打ちをかけるように短く振動する。

メッセージが届いた合図。その小さな音が、今の私には警告音のように聞こえてしまう。


「……キモがられちゃったかな」


いくら配信に通っているリスナーだとはいえ。
いきなり「声が好き」なんてメッセージを送ったら、拒絶されてもおかしくない。

嫌われたかもしれないという恐怖で、指先が冷たくなる。
けれど、恐る恐る画面を覗き込んだ私の目に飛び込んできたのは、予想を遥かに上回る……あまりに甘い、彼からの返信だった。
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