好きになった人は、みんなのアイドルで 3

45話 もう少しだけ

ーー悠太郎サイド

「そういえばさ、悠太郎、彼女には連絡したの?」
姉ちゃんに聞かれる。

「……してない」

「そっか。……言えない?」

「言えない」

紬ちゃんは、ガッカリした顔なんか見せずに
辛かったね、しんどかったね、って抱き締めてくれるだろう。
……だからこそ、言えない。

「悠太郎の彼女の話?私も聞きたい」
母さんが入ってくる。
「同じ大学の子?それともダンスの子?」

「……同じ大学。スタジオの近くのカフェでバイトしてて、そこで話すようになったのがきっかけで」
「それから、大学も一緒だって分かって」

あれ、俺、いつからこんなに紬ちゃんのこと好きになったんだっけ。

「最初は可愛いなって思ってただけだったけど」
「いっつもカフェで頑張ってて」
「あと、パン焼くのめっちゃ上手くて」

いつしか、紬ちゃんを目で追ってた。

「俺さ、アイドルになりたいから彼女とか作る気無かったけど」
「気付いたら、めっちゃ好きで」

あー、家族相手に何話してんだろ。
でも、紬ちゃんのこと話したら、止まらなかった。

「それなのに、今回のこと、言えなくて」
「会いたいのに、会えなくて」

アイドルの夢と同じくらい大切にしていた紬ちゃんを、
俺は今、遠ざけてしまっている。

「そんなに好きなんだね」
「お母さんも、いつか会ってみたいな」

「そうだよ、連れてきたらいいよ」
「実家にいるうちにさ」

もう少しだけ、待ってて。
もう少し、気持ちの整理したら、連絡するから。
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