君の言葉で夢を見たい
- しっくりこない記号 -
「――ってことがあってさ。結局俺だけラーメン食べ損ねたんだよな……って、聞いてる?」
顔を覗きこまれて、テキストから顔を上げた。
「あー……ごめん。なんだっけ、練習室でコーヒーをぶちまけた話だっけ?」
「ちげーよ、それは昨日の話だわ」
じとりと目を細めるメンバーに「ごめんごめん」と軽く謝る。
「最近どうした? この前の日本スケジュールの後から、ずっと日本語の勉強してるよな」
「うん――」
返事をしながら開いていたテキストをパタンと閉じた。
その表紙にはカクカクとしたフォントで「일본어 초급(日本語 初級)」と書かれている。
それは彼女の柔らかい日本語とはあまりにもかけ離れたビジュアルで、なんだかしっくりこない。
それどころかページにずらりと並ぶ角ばった日本語は、どこを切り取っても彼女の声とは重なりそうになかった。