クールな年上彼女は焼酎がお好き


 気を取り直して訊ねると、頼子さんは恥じらうように視線を逸らした。

「……昨日言ったでしょう」
「昨日はお酒を飲んでたので。もう一度確かめさせてください」

 途端に彼女は眉を下げて狼狽えた顔をする。
 確かにこういう表情は、仕事中には絶対にしないし、絶対にしてほしくない。
 だって可愛いのだ。いじめたくなるくらい。

「頼子さん……」

 軽率に煽られた僕は、彼女の腕を引き寄せてベッドに引き込み、唇を重ねようとする。しかしそれは、すかさず割り込んできた手のひらによって阻まれた。

「いいじゃないですか、少しくらい」

 くぐもった声で不満をこぼすけれど、頼子さんは「だめ」とばっさり切り捨てた。

「もう準備しないと、会社に行く時間だから」

 「え?」と僕は時計を見やるが、まだ全然遅刻する時間ではない。立ち上がってその様子を眺めていた頼子さんは呆れたように苦笑する。

「遅刻ギリギリに行って、あたふた仕事を始めるなんて、避けたいでしょう?」

 そう口にする表情は、僕にとっては見慣れたクールな頼子さんだ。
 なんだかそれで、いろいろ分かってしまった。
 しっかり者は表向きだけだと頼子さんは言うけれど、きっとそれももう、彼女の一部。昨夜、巧みな手技で僕を虜にした彼女には、普段の大人な振る舞いに通じるものが確かにあった。クールさと無防備さという相反するギャップは僕を惹き付けてやまない。
 とはいえ、冷静さを取り戻した頼子さんにはとても敵う気がしないので、僕はキスを諦め、しぶしぶベッドから降りることにした。
 二人で朝食を食べている際、ふと思いついて聞いてみた。

「そういえば昨日はなんであんなに飲んでたんですか?」
「あれは……っ、オミくんとどうやって仲直りしたらいいか相談したら、もういっそ酔っ払った素の姿を見てもらえばって半ば強引に……」
「先輩に感謝しないといけないですね……」

 もとをたどれば、行き違いのきっかけも先輩から聞いた話だった。結果として頼子さんとの仲はこうして深まったわけだから、先輩が恋のキューピッドだったのは間違いない。
 ようやく普通のカップルになれた僕たちは、次の週末に家飲みをやり直そうと約束した。可愛らしく酔う彼女をそばで眺められる日が、僕は今から待ち遠しくてしかたがない。
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