初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい
 それを残念に思いながら、執事に身支度を手伝ってもらう。アレグリア侯爵家の使用人は皆、優秀だ。常に主人に何を求められるかを考え、先回りして準備してくれる。イレギュラーな事態が起きたとしても、慌てた素振りはおくびも見せない。
 優雅かつ忠実に与えられた役割を果たす。
 彼らの主として、ふさわしくあらねばならない。ベルトランはより一層、気を引き締めた。妻帯者となり、守るべきものが増えたのだから。

 支度を済ませたベルトランは王宮に出仕し、膨大な業務を最速で終わらせる。
 邸で待つ妻のもとに帰宅すれば、使用人とともにエリアナが出迎え、一日の労を労ってくれた。夕食のビーフシチューを食べながら世間話を振るが、彼女は興味津々といった様子で熱心に相づちを打ち、たまに質問を挟んだ。

 ベルトランとエリアナに新婚の甘さはないが、夫婦の関係は決して悪くないはずだ。

 エリアナは食後のデザートにカスタードプディングを選んだ。恍惚とした表情で一口一口、味わって食べている。
 少し離れた位置で待機する使用人の視線は、雛鳥を見守る親のようだった。
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