初夜で狸寝入りする妻は異世界の記憶があるらしい
 結婚式の準備でも、「お忙しいのは重々承知しておりますが、招待客の最終確認はベルトラン様にやっていただかねば困ります」と真剣な眼差しで言い切った。彼女なら侯爵家を任せられると頼もしく感じた瞬間だった。

 エリアナの小さな唇を見つめた。やはり、貝のように閉じられている。
 口で何も伝えてこないことを見るに、察してほしい、という無言のメッセージなのだろう。

(まあ、準備だけでも大変だったからな。知らない貴族たちに囲まれながら微笑み続けていたし、挨拶回りでろくに食事をする時間もなかった。きっと疲れたのだろう。僕もここのところ睡眠不足で……だめだ、眠すぎる。もう何も考えられない…………)

 思考放棄したベルトランは妻に布団をかけ直し、その隣に潜り込む。いつもは冷えた寝台が暖かい。人肌に温められた布団がひどく心地よかった。
 抗いきれない睡魔と戦うのを諦め、身を委ねるように目を閉じた。

 ◇◇◇

 翌朝、目が覚めたら隣の温もりは消えていた。
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