ひとりが嫌で、今日も笑う。
第1話
昼休みのチャイムが鳴った瞬間、教室が一斉に息を吹き返した。
机を叩く音。
誰かが笑う声。
廊下に流れていく足音。
私はその中に溶け込むように、口角を上げた。
「透羽、早く購買に行こー!」
「うん、行こ!」
返事をした声は明るい。
いつも通り。
何も変わらない。
……変わらないようにしている。
誰かといるのが好きだからじゃない。
ひとりが、嫌だから。
笑っていれば、嫌われない。
笑っていれば、置いていかれない。
そんなことを考える自分が嫌いなのに、やめられない。
「ねえ透羽、これ美味しそうじゃない?」
「ほんとだ〜!」
「買う?」
「うん、買う買う!」
私は笑う。
相槌を打つ。
合わせる。
そのたびに、胸の奥が少しずつ削れていく。
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