転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
どうやらその声はこの室長室に近付いてきているようだった。何か起こったのだろうかと席を立とうとするが、目の前で楽しそうな雰囲気を醸し出している男の所為で身動きが取れない。
そうこうしているうちに室長室の扉が、勢いよく開け放たれた。
「ローウェル!」
いつもはあまり変わらない表情を焦りの色に変え、艶のある黒髪を乱して部屋に飛び込んできたのは、この国の騎士団服を身につけた男だった。
深紫色の瞳がローウェルとアシュリーの体勢を見て、険しく歪む。
そしてずかずかと室内に入り込んできたと思うと、その人はアシュリーに触れているローウェルの手を払い、彼を睨みつけた。
「ラインフェルト副団長……?」
驚いたようにアシュリーが声を上げる。何せその人はつい先ほど会話に出た、この国の騎士団のナンバーツー、ヴィルヘルム・ラインフェルトだったのだから。
彼はローウェルに向けていた視線をアシュリーの方へと向けてくる。その表情には先ほどまでの険しい顔付きはなく、どこか優しげで労るものだった。
「何かおかしなことはされていないか、アシュリー嬢」
「え? あ、はい、大丈夫です。……まだ」
「まだ?」
こっそりと呟いたつもりだったが、見事に言葉を拾われてしまった。次の瞬間には、ヴィルヘルムは再び鋭い視線でローウェルを睨みつける。
だが睨まれている当人のローウェルは涼しい顔で「やあ、ヴィルヘルム」と軽い挨拶をして、ヴィルヘルムの眉間の皺を増やしていた。
「ローウェル、お前は俺を怒らせたくてここに呼んだのか」
「違う違う、全然別件。そんな怖い顔しないでよ。アシュリーちゃんとはただの面談。最近残業が多いから、その原因は何かなーって話してただけ。ね?」
「そうなのか?」
危うく話で済まなくなりそうだったが、ローウェルの言葉は間違いではないので、アシュリーは首を縦に振った。
そうこうしているうちに室長室の扉が、勢いよく開け放たれた。
「ローウェル!」
いつもはあまり変わらない表情を焦りの色に変え、艶のある黒髪を乱して部屋に飛び込んできたのは、この国の騎士団服を身につけた男だった。
深紫色の瞳がローウェルとアシュリーの体勢を見て、険しく歪む。
そしてずかずかと室内に入り込んできたと思うと、その人はアシュリーに触れているローウェルの手を払い、彼を睨みつけた。
「ラインフェルト副団長……?」
驚いたようにアシュリーが声を上げる。何せその人はつい先ほど会話に出た、この国の騎士団のナンバーツー、ヴィルヘルム・ラインフェルトだったのだから。
彼はローウェルに向けていた視線をアシュリーの方へと向けてくる。その表情には先ほどまでの険しい顔付きはなく、どこか優しげで労るものだった。
「何かおかしなことはされていないか、アシュリー嬢」
「え? あ、はい、大丈夫です。……まだ」
「まだ?」
こっそりと呟いたつもりだったが、見事に言葉を拾われてしまった。次の瞬間には、ヴィルヘルムは再び鋭い視線でローウェルを睨みつける。
だが睨まれている当人のローウェルは涼しい顔で「やあ、ヴィルヘルム」と軽い挨拶をして、ヴィルヘルムの眉間の皺を増やしていた。
「ローウェル、お前は俺を怒らせたくてここに呼んだのか」
「違う違う、全然別件。そんな怖い顔しないでよ。アシュリーちゃんとはただの面談。最近残業が多いから、その原因は何かなーって話してただけ。ね?」
「そうなのか?」
危うく話で済まなくなりそうだったが、ローウェルの言葉は間違いではないので、アシュリーは首を縦に振った。