転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
千切れそうなぐらいに左右に揺れる犬の尻尾が一瞬見えた気がしたが、疲れているのかもしれないと額を押さえると、次の瞬間にその幻覚は消えていた。
「もしやどこか具合でも、」
「い、いえ、大丈夫です。ご心配をお掛けして申し訳ございません」
アシュリーは慌てて首を横に振った。そしてはっと思い出す。ヴィルヘルムはこの部屋の主に用があって、ここに来たのではなかったか。ともすると、もしかして自分は邪魔者なのでは?
そもそも急ぎの案件だからこそヴィルヘルムは飛び込むようにこの部屋に入ってきたのではなかったか。先ほどの彼の様子を思い出して、アシュリーは自身のことで迷惑を掛けている問題ではないと慌てた。
アシュリーの態度が変わったことに気付いたヴィルヘルムがその形のいい眉を歪ませた。
「アシュリー嬢?」
「申し訳ございません。ラインフェルト副団長は急ぎのご用だったのですよね。わたしの話は終わりましたので、これにて失礼致します」
「いや、急ぎという程ではないが」
「ですがどちらにしても、そろそろ仕事に戻るべきだと思っていたので……構いませんか、館長」
「いーよ」
どことなく楽しそうな返事が返ってきて、アシュリーは不安を覚える。こういうときの上司は絶対に何かよからぬことを考えている。
ヴィルヘルムに飛び火しませんようにと祈っていると、「あ、そうそう」とローウェルは言葉を付け加えた。
「招待状のこと、忘れないでね。当日ボクに無断で帰ったりしたら、優秀なアシュリーちゃんならどうなるかわかるでしょ?」
「えっ」
すっかり逸れたと思い、安堵していた話を再び切り出されて、アシュリーはつい呆けた声を出してしまった。
口角を上げて、ひどく楽しそうな口調でローウェルは続ける。
「ボクのお願いだし、用意は全部こっちでするから安心して?」
「か、館長、わたし行くとは言ってな……」
「アシュリーちゃんに似合うドレスを用意しておくから、大船に乗った気でいてよ」
「ドレス……?」
ローウェルの言葉に、ヴィルヘルムが怪訝そうな顔をする。
「もしやどこか具合でも、」
「い、いえ、大丈夫です。ご心配をお掛けして申し訳ございません」
アシュリーは慌てて首を横に振った。そしてはっと思い出す。ヴィルヘルムはこの部屋の主に用があって、ここに来たのではなかったか。ともすると、もしかして自分は邪魔者なのでは?
そもそも急ぎの案件だからこそヴィルヘルムは飛び込むようにこの部屋に入ってきたのではなかったか。先ほどの彼の様子を思い出して、アシュリーは自身のことで迷惑を掛けている問題ではないと慌てた。
アシュリーの態度が変わったことに気付いたヴィルヘルムがその形のいい眉を歪ませた。
「アシュリー嬢?」
「申し訳ございません。ラインフェルト副団長は急ぎのご用だったのですよね。わたしの話は終わりましたので、これにて失礼致します」
「いや、急ぎという程ではないが」
「ですがどちらにしても、そろそろ仕事に戻るべきだと思っていたので……構いませんか、館長」
「いーよ」
どことなく楽しそうな返事が返ってきて、アシュリーは不安を覚える。こういうときの上司は絶対に何かよからぬことを考えている。
ヴィルヘルムに飛び火しませんようにと祈っていると、「あ、そうそう」とローウェルは言葉を付け加えた。
「招待状のこと、忘れないでね。当日ボクに無断で帰ったりしたら、優秀なアシュリーちゃんならどうなるかわかるでしょ?」
「えっ」
すっかり逸れたと思い、安堵していた話を再び切り出されて、アシュリーはつい呆けた声を出してしまった。
口角を上げて、ひどく楽しそうな口調でローウェルは続ける。
「ボクのお願いだし、用意は全部こっちでするから安心して?」
「か、館長、わたし行くとは言ってな……」
「アシュリーちゃんに似合うドレスを用意しておくから、大船に乗った気でいてよ」
「ドレス……?」
ローウェルの言葉に、ヴィルヘルムが怪訝そうな顔をする。