転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
 そこへ、ジェラルドの背後から近付いてくる足音に気が付いた。アシュリーが顔を上げると、ジェラルドもちょうど振り返るところだった。
 
「アシュリー?」
 
 彼が着ている団服はジェラルドと似通ったデザインの、まったく真反対な色合いのもので。そしてアシュリーにとっては彼の着ている団服の方が見覚えがある。
 その深紫色の瞳を見開いたヴィルヘルムが、アシュリーとその前にしゃがみ込んでいるジェラルドを交互に見つめていた。
 
「これは、一体……」
 
 近付いてくる彼の疑問に何と答えるのが正解なのかわからず、アシュリーは言葉に詰まる。
 そんなアシュリーの代わりに、ヴィルヘルムの質問に答えてくれたのは立ち上がったジェラルドだった。
 
「ご令嬢たちから逃げているときに、たまたま彼女に──最近のお前のご機嫌の理由に会ってね。匿ってくれたんだが、そのときに俺が彼女を試すようなことを言ってしまって……そのお詫びをしていたところだ。けしてやましいことは何もないよ」
 
 てっきり誤魔化すかと思っていたらジェラルドはきちんと説明をしてくれて、アシュリーは内心で感心する。
 少なくともアシュリーの知る貴族は尊大でプライドが高く、人を不愉快にさせても謝るどころか、そのことを認めない人ばかりだった。
 だから謝られたこともそうだし、そのことを素直に認めてきちんと話せるジェラルドのことを少しだけ見直した。だからと言って、脅されたことや先ほど言われた言葉が帳消しになるわけではないけれど。

 ヴィルヘルムに、そうなのか? と問い掛けるような視線を向けられる。アシュリーが頷くと、安心したように彼は僅かに頬を綻ばせた。
 言葉で伝えるのが苦手だというヴィルヘルムは、あの告白の日以来、言葉は少ないけれど表情で、行動で好意を伝えてくれている。
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