【執着兄弟の溺愛シリーズ】エリート救急医は契約結婚した妻を極上の執着愛で囲い込む
「俺は一年前、君を食事に誘ったあの日……小春に好きだと伝えようとしていたんだ」
 漆黒の瞳に射貫かれ、心臓がドキッと音を立てて震えた。
 まさか、武尊さんが私に……?
 信じられない思い出聞き返す。
「でも、武尊さんは愛する人がいるって言っていましたよね……?」
 契約結婚を申し出た日、彼は確かに『俺には心に決めた人がいるんだ。その人以外考えられない』と言っていた。
「ああ。心に決めた人がいた。それは小春、君のことだ。俺は君以外考えられない」
「武尊さん……」
 驚きと喜びで声が震える。
 それから、武尊さんは淡々と言葉を紡ぎ、何故私に自分の身を明かさなかったのかを話してくれた。
 武尊さんは事故の後、私の事故前後の記憶が曖昧であると主治医から話を聞いたのだという。
「小春が入院している時、一度病棟に様子を見に行ったんだ。その時、お見舞いに来ていた若菜ちゃんと目が合った」
「若菜とですか?」
「ああ。初めて会った時、俺をどこかで見たことがあるような気がするって言われて、若菜ちゃんの鋭さに内心焦ったよ」
 確かに若菜はそんなことを言っていたけれど、武尊さんはポーカーフェイスで焦っている様子は一切感じられなかった。
「記憶がなくなったのは事故のショックからだ。もし俺のことを思い出せば、事故の恐怖まで思い出させることになる。もう二度と小春に辛い思いをさせたくなかった。だから、俺は苦渋の選択をした」
 武尊さんは私から身を引いて見守ろうと決め、離れている間も私が働く診療所の恩師である院長に事情を話して私の近況を聞いていたらしい。
 その中でオーナーの山田さんの話を院長から聞き、いてもたってもいられず院長に私を食事へ誘って欲しいと頼んだらしい。
「今までずっと黙っていてすまなかった」
 私は武尊さんの謝罪に首を横に振る
全ての点と点が一本の線になって繋がっていく。
今までずっと、なぜ武尊さんが初対面の私に契約結婚を申し出てくれたのか不思議で仕方がなかった。
『心に決めたお相手がいるなら、どうして私に契約結婚を申し込むんですか?』
 そう尋ねた私にあの時、彼はハッキリ答えた。
「……愛してるいるからこそ、だ。でも、君はまだその理由を知るべきではない」
 武尊さんの言葉の意味がようやく分かった気がする。
 はじめは私を事故に巻き込んでしまった罪悪感から契約結婚を申し込んだのだと思っていた。でも、それは私の誤解だった。
 私の知らないところで武尊さんはずっと陰ながら私を支えてくれていたのだと知り、喜びで胸がいっぱいになる。
「パーティの夜、小春にキスをしたのもその場の雰囲気に流されたからではない。どうしても小春への気持ちが抑えきれずにしてしまったんだ」
「武尊さん……」
「俺は今も小春を心から愛してる。だから、できることならこれからも一緒に暮らしたい。ただそれは俺の勝手な願望だ。小春の気持ちを教えてくれ」
 真っすぐ私を見つめながら真摯な言葉で愛を紡ぐ武尊さんに胸が震える。
 契約結婚のはずなのに、私はずっと武尊さんに大切にされていると感じられた。それは武尊さんに愛されていたからだったのだと悟る。
 大福を膝に乗せて一緒におしゃべりをしたあの時、私は武尊さんへ心惹かれていた。でも、今はさらに彼への想いが大きくなった。
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