【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
もしも雄大くんに何かあったらと考えると、不安と焦りで心臓がバクバクと震える。
「雄大くんー!」
 人の波をぬうように先程歩いて来たルートを引き返しながら雄大くんの名前を叫んだ時だった。
 数メートル前方に見覚えのある顔を見つけた。
 それは、先程園児たちに空港内のことを教えてくれたパイロットの氷室さんだった。
 その隣で氷室さんと手を繋いでいるのは、黄色い帽子を被った雄大くんだった。
「雄大くん!」
 ハッとして叫ぶと、雄大くんが「りんかせんせい!」と叫んでこちらに駆けてきた。私はその場に膝を突いて、胸に飛び込んでくる雄大くんの体を抱き留める。
 私にしがみつく雄大くんの体はほんのわずかに震えていた。迷子になり、怖くて心細い思いをしたに違いない。それに気付いて、胸が痛くなる。
「あの、怒らないであげてください。実は――」
 氷室さんが何かを言いかけるよりも先に、私は雄大くんをきつく抱きしめて謝った。
「――怖かったよね。不安にさせてごめんね」
「ううっ……りんかせんせえ……!」
「もう大丈夫だよ。無事で本当によかった……」
 雄大くんの頭を撫でると、ついうっかり目頭が熱くなった。
安堵の涙が湧き上がり、ぐっと必死に堪える。
 私は目元の涙を指で拭うとすぐに立ち上がり、氷室さんに頭を下げた。
「色々ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。それに、なんとお礼を言ったらいいか……」
「いえいえ。男子トイレの前にひとりでいたので、少し心配になって声をかけました」
「男子トイレ……ですか?」
「ええ」
 雄大くんに話を聞くと、どうやら途中でトイレへ行き、他のみんなとはぐれしまったようだ。
「ぼく、なるみせんせえにおしっこしたいって言ったよ」
「そうなの?」
「うん。なるみせんせえがトイレいってきなって。でも、でたらみんないなくて……」
 もしかしたら成美と雄大くんの間に行き違いがあったのかもしれない。
けれど、これは絶対にあってはならないことで、私達保育士側の失態に他ならない。
「先生が目を離したから悪いの。ひとりで不安だったよね。雄大くん、ごめんなさい」
 私は腰を屈めて雄大くんと同じ目線になって謝った。
「ううん、へいきだよ」
 すると、雄大くんは私を励ますように微笑んでくれた。雄大くんの優しさに胸がじんわりと温かくなる。
 すると、そばで私達のやりとりを眺めていた氷室さんが「子ども思いの良い先生ですね」と感心したように言って柔らかな笑みを浮かべた。
 イケメンの不意の笑顔の破壊力に慄く。
「えっ⁉ い、いえ、私はまだまだ未熟者なので!」
「ははっ、未熟者って。凛花先生は面白いね?」
 氷室さんは笑みを浮かべながら雄大くんに目を向ける。
「うん! りんかせんせい、やさしいしおもしろいんだよ!」
 雄大くんもようやく笑顔になる。
「あっ、そろそろ行かなくちゃ。今日は本当に色々とお世話になりました。雄大くん、行こう」
 一刻も早く雄大くんが見つかったと報告を入れなければならない。
「また、どこかで会えたらいいですね」
 氷室さんは私達を見送りながらヒラヒラと手を振る。
 彼の美しい笑みに目を奪われてドキッとしつつも、私はそそくさと頭を下げてその場を後にした。
 その後、すぐに成美に連絡を入れてみんなの輪に合流すると、六十代の園長がこちらへ駆け寄り「雄大くん! 無事でよかった!」と抱きしめて安堵した表情を浮かべた。
「園長先生、すみませんでした」
「話は後でしよう。とりあえず、気を抜かず保育園まで戻ろう」
「はい」
 園長の言葉に私はますます気を引き締め、子供たちの安全を第一に職務を全うした。
 夕方、保育園に迎えに来た雄大くんのお母さんに今日のことを報告して謝罪をし、二度とこんなことが起こらないようにすると約束した。
 子どもたちが帰った後は、職員内で反省会を行う。その場で今日の報告をすると、成美は「私、雄大くんからトイレに行きたいなんて言われていません」と泣き出してしまった。
 今回はすぐに雄大くんが見つかり大事にはならずに済んだが、大切な子どもを預かっている以上、泣いて謝罪しても許されることではない。
 園長やベテランの先生からの叱責も甘んじて受け入れる。
 私は担任として全体が把握できていなかったことを謝罪し、二度とこのようなことが起きないように再発防止対策を徹底しようと副担任の成美に伝えた。
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