あの夏、君だけを見ていた

4話 名前

昨日のあの子がまたすげえ遅いスピードで走ってる。
あれ、20km/h出てる?笑

「はい、可愛い子いるからってよそ見しなーい」

「え、教官あの子のこと可愛いって思ってるんすか?」

「はい、教官のこと揚げ足とらな〜い」

「すんません」

俺はね、ちょっと思ってるかも。可愛いって。

ーー
休憩室に入ると、さっきの子が疲れた顔でお弁当を食べている。
……てかお弁当。料理上手かよ。 ますます話してみたい。

「ここ、いいですか?」
女の子の斜め向かいの席を指さす。

「あ、どうぞ」

朝比奈 紬。
無造作に置かれた鞄から出ている手帳で名前を知ってしまう。
え、名前まで可愛い。……呼んだらびっくりするかな。
「朝比奈さんは、大学生ですか?」

「え、名前」 と小さな声で驚く朝比奈さん。

手帳を指さすとほっとしたように笑った 。
「あ、大学生です」

笑った顔、初めて見た。
……待って、この子相当可愛い。

……って、俺も名前を教えないと気持ち悪すぎるよな。
「すみません、フェアじゃないですね」
と呟いて俺も手帳を見せる。
「矢田 海斗です」

「……矢田くんも、大学生ですか?」

やった!朝比奈さんから話題振ってくれた!

「うん、俺、東都大学の2年生です」
「あと、下の名前で呼ばれる方が好きなんで、海斗でいいです」

「あ……じゃあ、海斗くん」
「私も2年生です。明凌大です」

あっさり海斗くんと呼んでくれる。
待って、名前呼ばれるの嬉しいかも。

「明凌なの?頭いいね」
同学年と分かってついタメ口になってしまう。
「午後も実技?それとも学科?」

「13時から実技1コマ受けて、その後学科2つです」

やばい、今日一日一緒じゃん。
「あ、俺も一緒だ」
「じゃあまた後でね、朝比奈さん」

お昼を食べ終えてまで一緒にいるのはさすがにキモいよね。
手を振って立ち上がる。

「うん、またあとで」
朝比奈さんも手を振ってくれる。

ちょっと待って、ほんとに教習所に可愛い子いたじゃん。
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