あの夏、君だけを見ていた

3話 君

3回目の教習。
だいぶ運転にも慣れてきた。

前からめちゃくちゃゆっくり走る車が来る。
……絶対に今日初めての子じゃん。

遠目に見てもハンドルをぎゅっと握りしめてガチガチなのが分かる。

「矢田さんよそ見しないでね〜」

「……してないっす」

「可愛い子いてもよそ見ダメだよ〜」

「いや、絶対あの子今日初めてだろうなって」

「やっぱりよそ見してたじゃないですか」

3回目だけど教官ともすぐ仲良くなった。
誰とでも仲良くなるの、俺の特技。

ーー
送迎バスに乗ろうと思って外に出ると、
さっきの絶対今日初めての子がいた。

可愛い子じゃん。声掛けちゃお。

「……おつかれさまです。今日初めてですか?」

「あ、はい。今日初めてで。」

「俺も入ったばっかりなんです。今日3回目」
「お互い頑張りましょうね」

「そうですね、頑張りましょう」

バスが来る。
先に待ってたからどうぞ、と言ったけど
お先にどうぞ、と言われたので先に乗る。

あ、なーんだ、俺と離れて乗りたかっただけか。
さすがに隣に座ったりしませんよ、チャラく見えたか。失敗。

まさか、この子のせいで教習所に行くのが楽しみになるなんて。
この時の俺は、知る由もなかった。
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