あの夏、君だけを見ていた

7話 ミルクティー

教習を終えて外から休憩室を覗くと、
朝比奈さんが机に伸びてる。

……朝比奈さん、疲れてるな。
自販機で自分の飲み物を買った後、少し迷ってミルクティーを買う。

「お疲れだねえ」
顔の前にミルクティーの缶を置く。

「あ、おつかれさま」
びっくりしたように顔を上げる朝比奈さん。

「ま、糖分でも補給しなよ」
「甘いやつにしたから」

「え、お金……」
財布を取り出すから「いい、いい」と手を振る。

「でも……」と申し訳なさそうな顔をするから
「じゃあ今度奢って」と自販機を指さす。

「分かった、ありがたくいただくね」

おいしい、と笑顔になる朝比奈さんを見て
あー買って良かったな、なんて思って。

やけに光って見える左手の小指の指輪が気になる。
……多分、求めてない方の答えが返ってくるけど、それでも。

「ね、それ彼氏?」
朝比奈さんの左手を指さす。

「うん、彼氏からもらったやつ」

……ほら。やっぱり彼氏だ。

「彼氏いるのに、こんな教習所通ってていいの?」
「デートとか……せっかくの夏休みなのに」

上手くいってないとか……だったら指輪なんて、大事にしてないよな。

「あ、彼氏、今韓国にいるんだ」
「しばらく会えてないの」

思いがけない返事だった。
「え?彼氏、韓国人?」

「ううん、日本人だけど」
「……アイドル目指して練習生してるの」

「……へえ、アイドル」
「すごいね」

「うん、自慢の彼氏」
「尊敬してる」

アイドルだかなんだか知らないけど、
朝比奈さんの顔見たら、俺なんか敵わないって分かった。
……え、俺って、朝比奈さんのこと。
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