ゆびきりげんまん
「そういえば、本当に付けてくれてるんだね」
「え?」
「キーホルダー。…凄く嬉しい、」
貰った次の日につけていた猫のキーホルダー。
私にはその存在が当たり前になっていて、忘れていた。
彼は本当に嬉しそうにそのキーホルダーに優しく触れて、ふわりと笑った。
「っわぁ!?」
その表情に視線を奪われて、足元にあったタイヤ止めに私は気付かず見事に足を引っ掛けて転けそうになった。
咄嗟に目を瞑り、次にくる衝撃に備えて手を出したはずなのに痛みどころか何も来ない。
「っぶねぇ、」
どうやらお腹に回された神崎さんの腕のおかげで私は転けることなく助けられたらしい。
「ちゃんと足元見ないと危ねぇだろ」
「っご、ごめんなさい!」
「んっとに危なっかしい…」
初めて聞くいつもとは違う口調にドキッとしてしまった。
物腰の柔らかい言葉じゃない、どこか男らしい口調に。
「…………」
「神崎さん?」
「…いや、なんでも。家の近くまで送るよ」
「えっ、流石に悪いですよ」
「車近くに止めてあるから」
おいで、と手を引かれ駐車場までついて行く。
その道中に周りを見渡しても車は見当たらない。
やっぱりただの偶然で、私の勘違いだったんだろうか。
そう思いながら駐車場に着くとそこには黒の高級そうな車が止まっていた。