酔っ払った勢いで子どもを授かりました。って、相手は誰?
「あなたの病気はすっかり治ったようですね。この地での療養のおかげだ。となれば、僕との結婚になんの支障もないわけです」
「えっと……なんでそんなに私との結婚にこだわるわけ?」
「大事な記憶をなくすような人には教えません」
 アイゼルはぷいっと顔を背ける。
 これは間違いなく怒っている。いや、記憶をなくした自分が悪いのはわかっているのだが。
「今日は、これで帰ります。あなたの元気な姿が見られて安心しました。もう僕から逃げようとは思わないでくださいね?」
 立ち上がるアイゼルの姿を見て、エリサリナの胸は大きく鼓動する。なんのドキドキかはわからない。
「あの……見送る……ります」
 慌ててしまったせいか、立ち上がったエリサリナは思わずよろめいてしまう。
「危ない」
 すぐにアイゼルが素早く動き、倒れそうになるエリサリナの身体を支えた。
「だから、あなたから目を離せないんですよ。なんでも一人でやろうとして、誰かに頼ろうとしない。もっと僕を頼ってほしいのに……」
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