君と終わった街で
その日の帰り道。
エレベーターを降りた瞬間、スマホが震えた。
洸太は反射的に画面を見る。
文姫だった。
胸の奥が、小さく波立つ。
『今日は残業?』
たったそれだけのメッセージなのに。
昨日までの東京とは、少し違う夜に見えた。
洸太は立ち止まったまま、スマホの画面を見つめた。
駅へ向かう人の流れが横を通り過ぎていく。
誰かの笑い声。
遠くで鳴るクラクション。
東京の夜は騒がしいはずなのに、文姫からの一文だけがやけに鮮明だった。
洸太は数秒考えてから、歩きながら返信を打つ。
『もう帰るとこ』
『文姫は?』
送信してすぐ、既読がつく。
その速さに、また少しだけ胸がざわつく。
『今ちょうど仕事終わった』
『お腹すいた』
思わず笑ってしまう。
高校の頃から、文姫は腹が減ると機嫌が悪くなっていた。
昼休みに購買へ走って。
パンが売り切れてるだけで本気で落ち込んで。
洸太はよく、自分の分を半分渡していた。
そんな記憶が、急に鮮明に蘇る。
駅前の信号が赤に変わる。
立ち止まった人波の中で、洸太はスマホを見下ろした。
『なんか食えば』
『冷たい』
『知らない』
『高校の時もっと優しかった』
その一文に、洸太の指が止まる。
夜風が少し強く吹いた。
文姫は、どんな顔でこの文章を打っているんだろう。
昔みたいに笑っているんだろうか。
そんなことを考えてしまう自分に、少し困る。
『あの頃は必死だったから』
送ったあと、自分で少し後悔する。
重かったかもしれない。
でも文姫は、しばらくしてから、
『知ってる』
とだけ返してきた。
その短い言葉が、妙に胸に残った。
信号が青に変わる。
人の流れがまた動き出す。
洸太も歩き出した。
スマホをポケットにしまっても、胸の奥の熱だけは残ったままだった。
改札を抜け、電車に乗る。
窓ガラスには、ぼんやりと自分の顔が映っている。
その時、またスマホが震えた。
『ねえ』
『今週どっかでご飯行かない?』
電車が静かに揺れる。
洸太は、その画面をしばらく見つめたまま動けなかった。
エレベーターを降りた瞬間、スマホが震えた。
洸太は反射的に画面を見る。
文姫だった。
胸の奥が、小さく波立つ。
『今日は残業?』
たったそれだけのメッセージなのに。
昨日までの東京とは、少し違う夜に見えた。
洸太は立ち止まったまま、スマホの画面を見つめた。
駅へ向かう人の流れが横を通り過ぎていく。
誰かの笑い声。
遠くで鳴るクラクション。
東京の夜は騒がしいはずなのに、文姫からの一文だけがやけに鮮明だった。
洸太は数秒考えてから、歩きながら返信を打つ。
『もう帰るとこ』
『文姫は?』
送信してすぐ、既読がつく。
その速さに、また少しだけ胸がざわつく。
『今ちょうど仕事終わった』
『お腹すいた』
思わず笑ってしまう。
高校の頃から、文姫は腹が減ると機嫌が悪くなっていた。
昼休みに購買へ走って。
パンが売り切れてるだけで本気で落ち込んで。
洸太はよく、自分の分を半分渡していた。
そんな記憶が、急に鮮明に蘇る。
駅前の信号が赤に変わる。
立ち止まった人波の中で、洸太はスマホを見下ろした。
『なんか食えば』
『冷たい』
『知らない』
『高校の時もっと優しかった』
その一文に、洸太の指が止まる。
夜風が少し強く吹いた。
文姫は、どんな顔でこの文章を打っているんだろう。
昔みたいに笑っているんだろうか。
そんなことを考えてしまう自分に、少し困る。
『あの頃は必死だったから』
送ったあと、自分で少し後悔する。
重かったかもしれない。
でも文姫は、しばらくしてから、
『知ってる』
とだけ返してきた。
その短い言葉が、妙に胸に残った。
信号が青に変わる。
人の流れがまた動き出す。
洸太も歩き出した。
スマホをポケットにしまっても、胸の奥の熱だけは残ったままだった。
改札を抜け、電車に乗る。
窓ガラスには、ぼんやりと自分の顔が映っている。
その時、またスマホが震えた。
『ねえ』
『今週どっかでご飯行かない?』
電車が静かに揺れる。
洸太は、その画面をしばらく見つめたまま動けなかった。