君と終わった街で
洸太は夕焼けへ視線を向けながら、小さく息を吐いた。

ただの友達。

昔みたいな関係。

そんな言葉では、もう誤魔化せないところまで来ている気がした。

文姫は隣で、猫のぬいぐるみを軽く抱えている。

その姿が少し可愛くて、洸太は思わず笑ってしまう。

「なに」

「いや、気に入ってんじゃん」

「別に?」

「抱えてるくせに」

文姫が少しだけ照れたみたいに視線を逸らす。

その反応が、高校の頃と変わらなくて。

洸太は胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。

夕方の街は、人が少しずつ夜へ流れていく時間だった。

信号待ちの人たち。

遠くの電車の音。

柔らかいオレンジ色の光。

その全部が、やけに穏やかに見える。

「夜ご飯どうする?」

洸太が聞く。

文姫は少し考えてから、

「なんでもいい」

と笑った。

「洸太といると、どこでも楽しいし」

その言葉に、洸太の心臓がまた小さく跳ねる。

文姫は本当に、こういうことを自然に言う。

昔からそうだ。

だから期待してしまう。

でも今は、その言葉を素直に嬉しいと思いたかった。

「じゃあ、家で飲む?」

気づけば、そう口にしていた。

言った瞬間、少しだけ緊張する。

でも文姫は驚いた顔をしたあと、

「……いいよ」

と、小さく笑った。

その返事だけで、洸太の胸が静かに熱くなる。

高校の頃には、絶対なかった時間だと思った。

二人で並んで電車へ乗る。

窓の外は、少しずつ夜へ変わっていく。

文姫はぼんやり外を見ながら、ふと思う。

もし高校の頃。

今みたいに洸太を見れていたら。

何か違ったんだろうか、と。

あの頃の洸太は、真っ直ぐだった。

自分だけを見てくれていた。

でも文姫は、その気持ちが怖かった。

大きすぎて。

応えられない自分が苦しくて。

だから、ちゃんと向き合えなかった。

でも今は違う。

今の洸太といると、苦しくない。

安心する。

隣にいたいと思う。

その感情が、少しずつ胸の中で大きくなっていた。
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