君と終わった街で
第2章 友達みたいに…
朝、目が覚めた瞬間。

洸太は数秒だけ、自分がいつもと少し違う気分なことに気づけなかった。

薄いカーテンの隙間から、白い朝の光が差し込んでいる。

遠くで電車の走る音。

枕元のスマホに手を伸ばして、時間を見る。

七時十二分。

いつもと同じ時間だった。

けれど、昨夜のことを思い出した瞬間、胸の奥が少しだけ熱を持つ。

文姫。

その名前が頭に浮かぶだけで、まだ現実感がなかった。

洸太は仰向けのままスマホを開く。

LINE。

一番上にある名前を見る。

『文姫』

短いメッセージ。

『今日はありがとう。なんか、普通に楽しかった』

昨夜、何回読み返したか分からない。

自分でも気持ち悪いなと思う。

十年前なら、もっと酷かっただろうけど。

洸太は小さく息を吐いて、画面を閉じた。

けれど数秒後、また開いてしまう。

……何してるんだ、俺。

思わず苦笑する。

部屋は静かだった。

一人暮らしを始めて何年も経つのに、時々この静けさに疲れる。

必要なものだけ置いた部屋。

無難な家具。

仕事して、帰って、寝るだけの生活。

別に不幸じゃない。

でも、何かを楽しみに朝を迎えることなんて、ずっとなかった気がする。
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