君と終わった街で
その言葉が、静かな部屋へ落ちる。

文姫の呼吸が止まった。

洸太は冗談みたいに笑っていない。

真っ直ぐだった。

高校の頃みたいに、逃げ場がないくらい。

でも昔と違う。

あの頃みたいな勢いじゃなくて。

ちゃんと文姫の気持ちを待ちながら、それでも逃げずに言っている。

その優しさが、余計に苦しい。

文姫は洸太の袖を掴んだまま、小さく息を吐く。

心臓がうるさい。

熱のせいで頭がぼんやりしているのに。

洸太の声だけ、妙にはっきり聞こえる。

「俺さ」

洸太が静かに続ける。

「再会した時、正直びっくりしたんだよ」

文姫は黙って聞いている。

「もう普通に会話できるだけで嬉しくて」

洸太は少しだけ笑う。

「だから最初は、それで十分って思おうとしてた」

その言葉が、胸へ刺さる。

たぶん本当にそうだったんだろう。

無理に距離を詰めなかったのも。

優しくて自然だったのも。

全部、文姫を困らせないため。

でも。

「昨日、文姫が帰ったあと」

洸太は少し視線を落とした。

「めちゃくちゃ怖かった」

その声は、小さいのに痛いくらい真っ直ぐだった。

「また、いなくなる気がして」

文姫の胸が締め付けられる。

洸太は苦笑する。

「高校の時も、そうだったから」

あの頃。

文姫は洸太の気持ちに応えられなかった。

そのまま卒業して。

自然に離れていった。

洸太の中では、きっとずっと終わっていなかったんだと分かる。

文姫は唇を噛む。

苦しかった。

でも同時に。

こんなにも真っ直ぐ想われていることが、どうしようもなく嬉しい。

洸太がゆっくり文姫を見る。

「だからもう」

静かな声だった。

「今さら友達だけでいるの、無理かもしれない」

その瞬間。

文姫の胸の奥で、何かが大きく揺れた。
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