その指先が私を誘惑する〜絡めた指先に翻弄されて〜
 車の手配をした私は専務に同行するように言われていた

 名取専務に付いて専務の仕事を全面的にサポートするのも、専務付きの秘書である私の重要な仕事だ。だから入社以来私は仕事の殆どの時間を専務と過ごしていると言っても過言ではなかった

 車内でもつい気にしてしまうのは名取専務の美しい指先だ
  
 その完璧な指先を見つめるたび私は自分の中にある高揚感を抑えられなかった

 「いつも思ってたんだが、いつも俺の事を見ているのは気のせいじゃないよな⁇」

 「えっ…」

 突然言われた鋭い言葉に過剰に反応してしまい、自分の気持ちが誤魔化せなくなってしまった。何と返して良いのかもわからず、「それは…」と言い訳しようとする口がしどろもどろになってしまう
 
 「俺の事を見て色々言う女子社員達は山程いるが、君の視線は他の子達とは違っている気がする」

 言葉尻が意味ありげな名取専務は私が逃げられないように社内の密室に私を追いやったに違いない

 これも名取専務の策略なのだろう。今の私は専務の策略に見事にハマってしまった罠にかけれた小動物のようだ

 「じ、実は…私…せ、専務の指先に物凄く魅力を感じてしまうんです」

 息石切って一気に言い切った私は隠しておきたかった自分の中の引き出しをいっぺんに開けてしまったような感覚だ 
 
 引き出しの中を空っぽにされてしまった私はもう入れる物がない自分の引き出しに次は何を入れたら良いのかと少し悩んでしまう

 「指先だけか⁇」

 専務の言葉は私の想像を超える意外なものだった。指先だけかと言われるとそれはそれで返答に困ってしまう。私が魅力的に感じているのが専務の指先だけかと聞かれると、それは違うのではないかと心がざわついた

 「専務は全てが魅力的です。でも、私にとって専務の指先は完璧なんです」

 私が自分の指先フェチに気が付いたのは中学生の時だ。ある日ピアノを習っている指先の綺麗な男の子がピアノを弾いていた。その男の子の指先を見て、何て綺麗なんだろう⁇と心をときめかせ、ビリビリと電流が走ったような感覚を覚えたのが始まりだ
 私の初恋のようなものだった

 「綺麗な指先だね」

 そう男の人に言ったのはそれが初めてだった。男の子は困ったように「それってどう反応していいの分からない」と苦笑して複雑な顔をされてしまった

 結局それ以上私からアクションを起こすこともできず、淡い私の初恋は実らなかったけれど、私にとってときめいて心を湧き立たせる要因は、間違いなく美しい指先だとその時確信した
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