炎上代行~キミとなら、最悪でもいい~

そう言いながら、渡辺くんは自然に私の肩を抱き寄せる。

ドクンっ!

顔がみるみるうちに熱くなって、赤面した顔を見られたくなくてパーカーのフードを深く被った。

「え、なに?照れちゃった?」

「ち、違います!顔バレしないためだし!」

私がカミカミで言うと、渡辺くんは『ふーん』と面白そうにウシシと笑う。

配信開始ボタンを押す前、渡辺くんは画面に入り込まないようにギリギリのラインに体を動かした。

画面にはフードを深く被った私と、私の肩に腕を回して密着する渡辺くんが少しだけうつっている。

配信が始まると、すぐにコメント欄が流れ始める。

『距離近っ!!』
『え、彼氏いたんだ!』
『二人とも顔見せてよ!』
『彼氏、もっとこっちに寄って』
『なんか、雰囲気カッコいいんだけど』

一気に盛り上がっていく。

一方で、やっぱりアンチコメントも寄せられた。

『見せたがり』
『結局自慢したいだけじゃん』
『顔出ししてない時点で、お互いブスなんでしょ』

視聴者が増え続けるたびに、炎上しやすくなっていく。

渡辺くんは楽しそうに、私の耳元に口を近づけてくる。

「おまえ、さっきから顔赤いよ」

「……なっ!」

「こんだけ炎上してんのに、顔赤いとか何事」

「う、うるさいな……っ!」

そのやりとりさえ、コメント欄では色々好き勝手に書かれていた。

地下アイドルに目を向けていた人たちも、私たちの配信で荒れている。

それは一瞬のことなのかもしれないけど、任務としては完璧だ。

配信終了後、私は今まで吸えていなかった空気を思う存分肺に送り込んでパーカーのフードをとった。

やっと生きた心地に戻る。

「なに?息とめてたの?」
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