炎上代行~キミとなら、最悪でもいい~

「あれ、もしかして、男慣れしないタイプ?」

私の耳元で不敵な声を出す。

「なっ……ちょっ……何よ!」

あまりに近い渡辺くんの顔に、心臓が耐えきれなくなってうるさい。

頬も熱を持ち出して、私の顔、多分、真っ赤だ。

「おまえさ」

不意に、渡辺くんが真顔になり真剣な声になった。

「本当は、今の自分捨てたいって思ってんじゃないの?」

「……え?」

「さっきも言ったじゃん。無理してんのバレバレだって」

何も反論できなかった。

図星だったから。

「心無いコメント来んの本当は怖いのに、自分の居場所見つけるために配信続けてんだろ?」

な、なんで……?

なんで、渡辺くんはこんなに私の気持ち気づいてるの?

渡辺くんは私のスマホを返すと、今度は自分のスマホを触り出した。

「これ、見てみろ」

そう言って、別の配信画面を見せてくれる。

そこにうつっていたのは、私もよく知っている、人気配信者の女子高生だった。

そして、現在大炎上中だ。

悪意ある書き込みによって、“性格最悪女”として叩かれている。

「コイツ、本当は何一つ悪くないよ」

渡辺くんが静かに言う。

「でも、一回炎上したやつなんか、誰も助けない」

私は画面を見つめた。

「じゃあ、どうするの?」

私が聞くと、渡辺くんがクイっと片方の口角を上げる。

「もっとデカい炎上を作る」

「もっとデカい炎上?」

「世間って、次の獲物を見つけたらすぐそっちに行くから」

「そんなの……めちゃくちゃだよ」

「だけど……」

渡辺くんは、言いながらどこか寂しそうに目線を伏せた。

「だけど、俺らがやれば、こいつは助かるから」

意味深な言葉。

自分から炎上を作るなんて、普通なら考えられない。

そんなの普通におかしい。

普通なら……。

考えながら、ハッとした。

私、そもそもみんなの言う“普通”から逃げ出したかったんじゃないの?

その言葉が嫌いで吐き気がして……。

それなのに、今の私って“普通に普通に”って言い過ぎだ。

< 5 / 27 >

この作品をシェア

pagetop