炎上代行~キミとなら、最悪でもいい~
その日の夜。
私は渡辺くんに言われるままに配信を始めた。
挑発的なタイトル。
煽るような話題。
案の定、コメント欄は一気に荒れ始めた。
だけど視聴者は爆罰的に増加。
炎上。
トレンド入り。
今までどんなに毎日配信を続けても全く視聴者は増えなかったのに、渡辺くんの言う通りのタイトルでしゃべってみたら、みるみるうちに増えていく。
何度も何度も話題性の強い配信を続けると、渡辺くんの狙い通り、元々炎上して女子高生への攻撃は少しずつ減っていった。
世間の目が、確実に彼女から私にうつっている。
「私、最低だ……」
「なんで?」
旧校舎の階段に座り込んで項垂れると、階段下で渡辺くんが私を見上げた。
「だって、心にも思ってないことを言って炎上させてる。誰かがそれで傷ついてたりしたらどうしよう」
私が座り込む膝にもっと顔を埋めると、渡辺くんは『ほらっ』と言った。
顔を上げると、階段の数段下から私に缶ジュースを投げる。
両手でそれを受け取ると、クリーミーココアと書かれた缶が、ひんやりと冷たかった。
「頭が疲れた時は、甘いものに限るだろ?」
「………」
渡辺くんは私の隣に来て腰掛けると、私と同じココアの缶を開けて、グイッと私に近づけた。
そして、私の缶を顎でさして、『早く開けろ』という。
「とりあえず、今日までお疲れさま。ほら、缶、こっちに近づけて」
私は缶のプルタブをあけ、渡辺くんのココアに近づけた。
「おまえが頑張って炎上させたおかげで、あの子はちょっとでも安心して眠れたと思うぞ」
「そうかな……」
「それに、おまえは誰かが傷つくことを配信したんじゃない。ただ、炎上させただけ」
「………」
「それで、あの子は救われたんだ」
渡辺くん……。