地味な私とお嬢様!~私たち正反対なのに最強コンビでした~
1. 地味な私は特待生
私の名前は、市ノ瀬《いちのせ》あかり。
中学一年生。
今日から、このお嬢様学園『セントリリー女学園』に特待生として転入することになりました。
なんで、特待生かって?
それには色々と事情がありまして……。
緑豊かな森の中に、ふいに現れる西洋風の鉄扉。
その扉が重々しく開くと、キラキラした世界が広がっていた。
一本の白い道の先に、ヨーロッパのお城みたいな大きな建物がいくつも建っている。
これが学校だなんてとても信じられない。
「うあ~! なんてステキな場所」
こんな所で勉強ができるなんて夢みたい。私のテンションは爆上がり。
『セントリリー学園』
この学園には、誰もが知っている大企業の子息子女や、医者や弁護士の子息子女が通う、
超がつくお金持ちの子供たちが集まる学校なのだ。
でも、私の家はお金持ちじゃないんだ。
むしろ、超がつくド貧乏。
3ヶ月前から失業中のパパと、病気でずっと入院しているママがいるお家なのだ。
まあ、そんなこと気にしても仕方ない……。
私はこの学園で3年間平穏無事に卒業できればそれでいい。
もう、パパやママに心配かけたくないんだ。
お城みたいな校舎に入ると、中は全て大理石で出来ていた。
ツヤツヤの廊下を歩くと、靴が勝手にコツコツ鳴り響く。
生徒達が「ごきげんよう」と丁寧な挨拶を交わして、優雅にお辞儀をしている。
(も、もしかして、私かなり場違いかも!?)
急に不安がおそってきた。
あ、のんびりしてられないんだった。
朝のホームルームに間に合うように行かないと!
慌てて私は走り出した。
――ドンっ!!!
「きゃあ!」
にぶい音がして、私は誰かとぶつかった。
いったぁ……。
おでこと鼻をしたたかぶつけて尻もちをつく。
はぁ~、転入そうそうについてないな。
私は立ち上がると制服の汚れを払った。
「お嬢様、大丈夫ですか!?」
近くで男の子の声がして振り向くと、スラリと背の高いタキシードを着た子が、しゃがんでいる女の子に手を貸している。
「ええ、私は大丈夫ですわ」
立ち上がった女子生徒に目を奪われる。
ハッとするような美少女なのだ。
つやめく長い黒髪、くっきりとした目鼻立ち、透明感のある白い肌。
手足が長くてモデルみたいな抜群のスタイル。
それに溢れるオーラが気品を感じる。
とても同じ人間、中学生とは思えない。
私は時間も忘れてその美しさに見とれてしまった。
「あなたは、大丈夫?」
急に現実に戻されて、私はハッとした。
いけない、思考が停止していたみたいだ。
「……あ、はい。ぶつかってごめんなさい! 私は大丈夫です」
美少女は声まで透き通るような美声だった。
「あなた、見ない顔ね。もしかして転入生?」
「はい、今日から1年A組でお世話になる、市ノ瀬あかりです」
「私も同じ1年A組ですわ」
「えっ、すごい偶然ですね!」
同じクラスの生徒に会えるなんて幸先よいかも。
「わたくしの名前は、白金セイラと申します。よろしくお願いいたします。」
ご丁寧に身体の前で両手を重ね、頭をさげられる。
「わっと、私の方こそ、よろしくお願いいたします!」
白金さんと真似してお辞儀をしたけれど、ちゃんとお辞儀ができていた気がしない……。
じっとりとした視線を感じて、白金さんの後ろにいる人と目が合った。
「えっ!?」
私は思わず声をあげてしまう。
だって、すっごい美少年だったのだ。
黒のタキシードがとっても似合うくらい長身で、黒髪、切れ長の瞳に、一文字に引かれた唇。
先ほど、白金さんに手を貸していた男の子だ。
でも、私に向けられた目はどこか冷たく拒絶するような雰囲気がある。
「お嬢様、先生とお話しする時間がなくなります」
静かな声で美少年は、白金さんをうながした。
「まあ、そうでしたわね。市ノ瀬さん、また教室でお会いしましょう」
「えっと、あ、はい」
頭が真っ白になりかけていた私とは逆に、白金さんは美しく微笑んだ。
「玉城、行きますわよ」
「はい」
白金セイラさんは、優雅に立ち去っていった。
その後ろで、玉城と呼ばれたタキシード姿の男の子は、ギロリッとこちらを一瞥して背中を向けた。
ええと、私、何かやらかしちゃったのかな……?
静かで平穏な学園生活のスタート初日に、
ちょっぴり暗雲がかかってきているなんて気づきもしなかった。