地味な私とお嬢様!~正反対な2人なのに最強コンビでした~
3. ティアラ紛失事件
――まさか、学園の敷地中に博物館が建っているなんて!
しかも、博物館を建てたのもセイラさんのお祖父さんらしく、大富豪のすごさを改めて感じる。
今日は朝から博物館の見学、ラッキー!
私はワクワクしていた。
小さい頃はパパに連れられて、博物館にエジプト展など見に行った。
昔の人の暮らしが分かる展示物が沢山あって、見ていてドキドキワクワクしたっけ。
でも、そんな気持ちはこの後、あっという間に吹き飛んでしまったんだ。
「はいはーい! 皆さんこちらに注目」
担任の木村先生が、1年A組の生徒を集めた。
「皆さんは、この学園に伝わる『三花(さんか)のティアラ制度』をご存知ですか?」
「知りませ~ん!」数人の生徒が答える。
三花のティアラ制度?
もちろん、私も聞いたことがない。
「リリーセント学園に古くから伝わる、 最も名誉ある制度です。
選ばれた生徒には、 年に一度、 “花のティアラ” が授けられます」
その三つのティアラがこちらと、
木村先生が横に動くと、フロアの中央に三つの展示物が現れた。
そこに、輝くティアラが三つ置いてある。
木村先生がコホンッと咳払いをしてから話し始めた。
「では、左側から紹介するわね。
黄金色の宝石トパーズと緑色の宝石オパールをちりばめたこのティアラは、
別名ヒマワリのティアラと呼ばれます。
暗い道を照らす希望の光をイメージして作られました」
「右側にあるこれは、クォーツの宝石のティアラ。
別名リリーのティアラと呼ばれます。
クォーツは皆さんも店先でよく見ることの多いもので、比較的安価なものも沢山出回っており、手に取りやすい宝石です」
「はぁ?」「安物?」「どんなのだっけ?」とわかったようなわからないような顔の生徒たち。
「そうですね、占い師がよく持っている水晶玉と思って下さい」
「なるほど」「それなら知ってる」と生徒たちも納得のご様子。
むしろ私は宝石ってクォーツしかわからないんですけど……。
庶民とセレブとでは価値観も生活環境も違うから仕方ないことだけど。
それにしても、リリーのティアラだけ妙に素っ気ない造りな気がする。
木村先生の説明も簡単だったし……。
「そして最後が、中央に鎮座しているこの燃える炎のように美しいティアラを見てちょうだい!」
ばぁん!と音がして、そのティアラのみライトアップされる。
「ルビーとガーネットの宝石のティアラ。しかも、このルビーは、最高級品とされている『ピジョン・ブラッド』なんですよ!」
「おぉ~!」周りから感嘆の声。
「ピジョン・ブラッドってなんですか?」
わからないので私は質問をした。
「転入生の市ノ瀬さんは知らないのですね。ピジョン・ブラッドとは、ミャンマーのモゴック産地で採れるルビーのことです。とっても貴重なんです!」
宝石好きなのか、木村先生はすごい熱量で教えてくれる。
でも、「市ノ瀬さんは知らないのですね」は余計なのでは?
「これは別名ローズのティアラと呼ばれます」
確かにどれも美しいティアラだけと、その中でもローズのティアラは輝きがすさまじく、ひときわ目を引く。
「毎年、ローズのティアラに選ばれる生徒は、気高く美しく、大勢の生徒たちを導くリーダーの素質をもった人物なのです」
みんながうっとりとした目でローズのティアラを眺めていた。
「いつもは厳重な防犯ガラスに守られていますが、今回はみなさんのために特別にガラスケースははずしています」と木村先生。
「おぉ~!」とどよめく生徒たち。
「さあ、近くでご覧ください」
わらわらと生徒達が、ひとつのティアラに集まった。
――ローズのティアラ。
赤色の宝石、ルビーとガーネットが全体に散りばめられた細工がとても華やかで美しい。
でも、なんだろう、印象が誰かに似ているような……。
「ローズのティアラですわ! 美しいっ。」「今年のローズは、きっと白金セイラ様よ!!」
私の近くで生徒たちがささやきあった。
確かにとっても華やかでまるで白金さんみたい。
1年生にして、ローズのティアラ候補になってるなんて、白金さんは凄いなぁ……。
気がつけば私は、食い入るように見つめた。
ティアラの細工のひとつひとつを入念にみていく。
私って集中すると周りが見えなくなる。
やばい、もう30分くらいたっちゃったかも。
次のリリーのティアラを見るため移動したところ……。
「キャーッ! ローズのティアラが失くなってるわ!!」「今まであったのに!」
ローズのティアラのそばで生徒たちが騒いでいる。
えぇ? ローズのティアラがない?
さっきまで私見てたのに……??
「ローズのティアラはどこ? 直前まで誰がローズのティアラのそばにいたの!?」
慌てて木村先生が駆け寄る。
恐ろしく血走った目で辺りを見回す姿。
自然な流れでローズのティアラを持ち去った犯人探しがはじまった。
「あ、市ノ瀬さんがずっとローズのティアラを見てました」
ふと、どこからともなく声が上がった。
木村先生が興奮気味に私を振り返った。
「市ノ瀬さん、どういうこと!?」
「えっ、私!?」
先生とまわりの生徒の視線が私に注がれる。
う、うわぁ……。
みんなの視線が痛い。
「私は、ローズのティアラを持ち出したりしていません」
この状況、完全に私は疑わしい人物扱いだ。
……どうしよう!!
「待って下さい! 証拠もないのに市ノ瀬さんを疑うのはおかしいです」
突然、誰かが立ちはだかった。
長くて美しい黒髪がさらっとなびく……白金セイラさんだ。
まさか、学園の女王様が私の味方をしてくれるとは驚きだった。
「でも、白金さん、直前まで見てたのは市ノ瀬さんで、それまでティアラはあったのよ?」
木村先生は釈然としない様子。
「そうですよ、お嬢様は、人を信用しすぎです」
セイラの隣にいる執事の玉城さんまで私に疑惑の目を向けている。
コンビニの件で、玉城さんとも仲良くなれそうかもと思っていたけれど、そんなに簡単ではないみたい。
「でも玉城、私たちは鞄も持っていないのにどこにティアラを隠すのです?」
「そうです、隠しようがないです」
私は両手を広げてみんなによく見えるようにした。
それに、制服のポケットは小さすぎてティアラなんて隠しようもないしね。
「……うう、確かに持ち出せる鞄も何もないわね。じゃあ、どこへティアラはいってしまったの!?」
青い顔をした木村先生。
周りの生徒たちも「どうしよう…」「困ったことになった」とささやき合っている。