執拗な恋、夜を飲み干す。
Prologue
 どうしようもなく惹かれた。

 その端正な顔立ちはもちろんだが、どこか掴みどころのないミステリアスな雰囲気に、画面から目を逸らせなくなった。

 彼を知ったきっかけは、友人のSNSだった。インスタグラムのストーリーに流れてきた、イケメンのいるバーという浮かれた紹介。そこに写り込んでいた一人の男性が、とても格好よかった。

 店の名前は『SABLE』。ハッシュタグを辿り、私はその名前を記憶した。

 私、花巻《はなまき》紗希《さき》は現在二十二歳。新社会人になったばかりの身だ。それでいて、恥ずかしいことに、この年まで恋愛をしたことがない。

 どうしても一度、本物の彼を見てみたい。だけど、一つだけ大きな問題があった。私は、お酒がからきし駄目だった。

 お酒も飲めない私がバーに行くなんて、場違いかもしれない。それでも、募る好奇心と高鳴る鼓動に背中を押され、私は週末、勇気を出して会いに行くことに決めた。







⋆ ˖ ⏱︎.ᐟ






 そうして初めて辿り着いた、バーの入り口。
 重厚な茶色のドアを前にして、足がすくんでしまった。

 何度も深呼吸を繰り返し、店の前を行ったり来たり、なかなか入る勇気が持てないでいると、不意に、目の前のドアが音もなく開いた。
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