執拗な恋、夜を飲み干す。
ゆらり、揺れる
 私達の関係は変わらぬまま、二年が経過した。

 この二年の間にもいろいろなことがあった。

 夏帆さんが転勤で離れ、戻ってきたと思ったら雅さんと結婚したり、私は住む場所が変わって、バーがほんの少しだけ遠くなり、仕事の勤務時間も変わって、以前のように頻繁には通えなくなったり…、前よりは、玲さんに会える頻度はかなり下がったと思う。

 それでも、明音さんの命日だけは必ず休みを取って、二人でお墓参りに行った。

 仕事が一段落ついたある日、久しぶりにバーを訪れると、夏帆さんがじっとこちらを見ていた。


「な、なんですか?」

「何か、随分綺麗になったわよね」

「気のせいですよ。酔ってますか?」

「いいや、目は肥えてる方だと思う」


 そう言いながら私の顔を覗き込んでくる夏帆さんに、私は苦笑いするしかない。


「私二十四の時、こんなんだったかな…。紗希ちゃんの方が大人っぽい」

「言い過ぎ」


 そう返しながら、相変わらずカシスオレンジをちびちびと口にする。バーに通い始めて二年も経つのに、お酒だけは強くならない。本当におかしい。

 玲さんの方へ目をやると、彼は楽しそうにお客さんと話し込んでいた。そんな立ち姿も、やっぱり格好いい。


「ねえ、正直言えばさ、玲くんも三十でもうおじさんでしょ?」

「え?」

「どうして紗希ちゃんみたいな若い子が、ずっと玲くんを思い続けられるんだろうって思うの。何度告白してくれても、振り向いてくれないしさ」


 六歳の年齢差は、確かに人によっては大きいのかもしれない。
 でも、私にとってそんなことはどうだってよかった。

 振り向いてもらえないかもしれない。それは承知の上で好きでいる。彼の抱えている事情を知っていたら、「私のことを好きになって」なんて簡単に言えるはずがなかった。

 彼は人を愛することに大きなトラウマを抱えていて、私はただ、それを支えたいだけ。

 だけど、その理由を夏帆さんに話すわけにはいかなかった。

 あの日の涙も、彼の過去も、知っているのは私だけ。
 それはずっと、玲さんと私だけの秘密。
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