指先で恋を伝えて
食事を終えた私と雅人さんは、夜の街を歩いた。
夜空には、上弦の月が浮かんでいる。
隣に居る雅人さんの様子をチラリと窺う。
すると、雅人さんも私を見ていたようで、視線が絡む。
なんとなく気恥ずかしくて、上手く言葉が出ない。
そのとき、雅人さんの手が言葉を紡ぎ始めた。
『あなたに会えて良かった』
きっと、私にもわかる単語を選んでくれている。
でも、優しい手が紡ぐ言葉に心が満たされる。
『私も、あなたに会えてうれしい』
雅人さんが足を止め、私の方へ向き直る。
そして、指先がひらひらと舞い文字を描く。
『美織さん、好きです』
今の私なら、雅人さんが描いた言葉の意味がわかる。
心臓がドキドキと早く動き出す。
文字を紡ぐはずの私の手は、震えていた。
けれど、精一杯の気持ちを乗せて、文字を描く。
『私も、好きです』
次の瞬間。
雅人さんの大きな手が、そっと私の手を包み込む。
指先から伝わる熱に、心をくすぐられ、愛おしさがつのる。
その手は、やっぱり綺麗だった。
優しくて。
あたたかくて。
私が恋をした、大好きな手。