逃げられるものならお好きにどうぞ。
束縛が強いのはお互い様
三が日も過ぎて、お正月休みはあっという間に終わってしまった。
一月四日、年明け一発目の仕事を終えて定時に職場を出れば、そこには黒瀬くんの姿が見える。
薄暗がりの中、街灯に照らされた黒瀬くんは、モスグリーンのマフラーを巻いて、黒のチェスターコートを羽織っている。
その佇まいは彼女の贔屓目をなしにしたって格好いいと思う。そこらの人気モデルとも遜色ないと言えるくらいには。
「黒瀬くん」
「百合子さん。仕事お疲れ様」
今の季節は真冬だ。雪は降っていないけど、夜の外気はきりりと肌をさすようにはりつめている。
寒いし風邪を引くといけないから、迎えは大丈夫だって言っているのに……黒瀬くんは「うん、分かったよ」と口先ばかりで、時間がある時には、今でもこうして迎えにきてくれる。