逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……もう、嫌いになるなんて無理だよ」
――だって私は、黒瀬くんの優しいところ、好きだなって思うところを、たくさん知ってしまった。
それに、実際かなり恐怖を感じることも言われてしまったけど……多分黒瀬くんは、私が本気で嫌がることはしないだろうなって。そう思うから。
私の言葉に嬉しそうに目を細めた黒瀬くんが、そのままぎゅって抱きついてくる。
あんな発言を聞いた後だったから、このまま食べられてしまうのではないかと身構えていたのだけど……。
「……ふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。今日は何もしないから。――でも、覚悟はしておいてね」
そう囁いた黒瀬くんに、強張っていた身体の力を少しだけ抜いた。
だけどその直後、衣服の下に手を差し込まれ、お腹をするりと撫でる掌の感触を感じる。
「……あの、黒瀬くん? 今何もしないって言ったよね?」
「ん? これはただのスキンシップだよ。それにこれくらいで恥ずかしがってたら……これから先、何もできないだろ?」
「っ、……」
そして黒瀬くんに上手いこと言いくるめられた私は、この後、彼に散々遊ばれることになり――スキンシップといえど、恋愛偏差値底辺の私に緊張するなというのはとうてい無理な話なのだと、ことごとく気づかされたのだった。