逃げられるものならお好きにどうぞ。


「……何よ、いつの間にそんな仲になってたわけ?」



美代さんがジト目で黒瀬くんを見遣る。

深紅のルージュが引かれた唇を尖らせて、拗ねているような口調で尋ねた。



「何? 俺たちがラブラブだからって妬いてるの?」

「……ムカつく」



黒瀬くんの発言に、美代さんはますます不機嫌そうに顔を顰めた。

辺りを漂う雰囲気が重たくなっていくのを感じて、話を逸らそうと、私は美代さんに一つの提案をする。



「あの、そんなに買い物に行きたいなら、他の人を誘えばいいじゃないですか。美代さんが誘えば、買い物に付き合ってくれる人なんてたくさんいるんじゃないですか……?」



美代さんほどの綺麗な人なら男の人が放っておかないだろうし、類は友を呼ぶ、なんて言葉もあるくらいだから、友達も美人な人が多そうだ。

全部個人的な想像だけど。



「……駄目よ。椿じゃなきゃ、意味ないの」



だけど美代さんは、物悲し気に呟いてその表情に陰を落とした。

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