逃げられるものならお好きにどうぞ。
「百合子ちゃん、慎二さんに会ったの……!?」
その勢いに圧されて、上半身を仰け反らせながら頷けば、美代さんはムッとした顔で私の左頬を軽く引っ張った。
「何よ、慎二さんにまで会ったなんて……私なんて、今年に入ってまだ一度も顔を合わせられてないってのに」
今の発言を聞くに、美代さんは本気で皇さんに思いを寄せているようだ。でも、それならどうして……。
「あの……それなら黒瀬くんじゃなくて、皇さんを買い物に誘えばいいんじゃないですか?」
純粋な疑問をぶつければ、美代さんは決まりの悪そうな顔で視線を逸らす。
「だって椿なら、慎二さんの好みとか、私以上によく知ってるから……服とか選んでもらおうと思ってたのよ。本人を誘うには、まだちょっと……あれだし」
「……なるほど」
――どうやら美代さんは、本気で好きな相手には奥手になってしまうタイプのようだ。
恥じらう姿が可愛らしく思えて、少しだけほっこりしてしまった。