逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……だめ。それは俺が却下する」
黒瀬くんの言葉に、美代さんが反論する。
「何よ、百合子ちゃん本人がいいって言ってるんだからいいじゃない!」
「その日、百合子さんは俺とデートする予定なんだよ。先約だから、美代さんは諦めて」
「……それじゃあ、翌週にするからいいわよ」
「その日も俺とデートするからだめ」
「はぁ?」
二人の言い合いは、少しずつヒートアップしていく。
今店内にいるお客さんの数はまばらだ。
――とはいえ、あまり騒がれると迷惑になってしまうだろう。
現に、奥の方に引っ込んでいたマスターが、騒ぎを聞きつけ何事かと顔をのぞかせている。
「あ、あの! それなら三人で行きませんか?」
間に割り込むようにして提案すれば、二人は言い合いをピタリと止める。