逃げられるものならお好きにどうぞ。


「これ、今付けてみてもいいよね?」



そう言って身に付けていた黒いピアスを取り外した黒瀬くんは、左耳にシルバーのピアスを付けてみせる。



「どう? 似合ってる?」

「……うん。すごく似合ってる」

「ほんと?」



自身の耳朶を触って嬉しそうに口角を持ち上げる黒瀬くん。

だけど、もう一方の右耳にピアスの穴は開けられていない。



「そういえば……黒瀬くんって、どうして片耳にしか開けてないの?」

「あぁ、これはね……本当は両耳に二つずつ開けるつもりだったんだけど、まずは片耳にと思って一気に二つ開けたら、めちゃくちゃ痛くてさ。それで断念しちゃった」

「そうだったんだ。……ふふ、何だか可愛いね」



黒瀬くんの口から「痛い」だなんて言葉が出てくるのが何だか以外で、可愛いなぁって、思わず笑みを漏らしてしまった。

黒瀬くんは「そう?」と首を傾げてから、手を伸ばしてそっと私の耳朶に触れる。

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