逃げられるものならお好きにどうぞ。


「香月先輩、お疲れ様です」

「林くん、お疲れ様」

「あの、すみません。僕もお手伝いできたらよかったんですけど……」

「え? ……あぁ、だって林くんはこれから外で打ち合わせがあるんでしょ? 頑張ってね」



社員の予定を把握するためにぶら下がっているホワイトボードには、林くんは夕方から打ち合わせが入っていて、確かそのまま直帰と書かれていたはずだ。



「香月先輩って……本当に優しいですよね」

「え? 別に、そんなことはないと思うけど……」

「いえ、そんなことありますよ! それにその……お綺麗ですし、仕事も早くて……俺の憧れなんです」

「あ、ありがとう」



林くんは爽やかな微笑を湛えたまま私を褒めちぎってくれる。

けれどその笑みが、少しだけ崩れた。眉を下げてしゅんとした表情になる。



「それと……この間の飲み会の時は、失礼な態度をとってしまってすみませんでした」

「この前の飲み会?」



――あっ、思い出した。黒瀬くんが迎えにきてくれた時のこと……だよね。

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