逃げられるものならお好きにどうぞ。
「佐々木ちゃん、手伝うよ」
「えっ、香月さ……でも……」
涙目でデスクに戻ってきた佐々木ちゃんは、自身のPCを立ち上げながらも、目に見て分かるほどに肩を落としている。
「二人でやった方が早く終わるでしょ? 困った時はお互い様だから」
「か、香月さんんん~……!」
えぐえぐと涙声で腕にしがみついてきた佐々木ちゃんの腕をぽんと軽く叩いて、「ほら、まずは業務の分担しちゃお」と書類に目を通した。
当然定時に上がれるはずもないので、黒瀬くんには残業をすることになった旨の連絡を入れてある。
どうやら佐々木ちゃんは誤って昨年の資料を使っていたようなので、今年の資料を引っ張り出して一から作り直すことになった。当然、やることはまだまだ山積みだ。
一段落ついたところで給湯室に行って珈琲を淹れていれば、林くんに声をかけられる。
林くんは、同じ部署で働く私の後輩にあたる男の子だ。