逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……おい、ちょっと待てよ」
だけど黒瀬くんにはその声が聞こえなかったのか、スルーして歩き続けている。
私の左手は黒瀬くんと繋がっているから、当然私の足も、同じように前へと進まざるを得なくて。
「百合子さん、デザートは食べるの?」
「え? えっと、私は……」
「おいコラ、待てって言ってんのが聞こえねぇのかよ!」
「プリンとか美味しそうだったけど」
「あ、うん。そうだね」
「おい! ちょっと待てって、」
「平日だし、そこまで混んでないといいね」
「っ、待てって言ってんだろーが‼」
痺れを切らしたらしい男の子がスタスタと歩み寄ってきて、黒瀬くんの肩をガシリと掴んで引き止める。